VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1235 『Laplace's Room』(柳川剛/アルカ・ラスト 終わる世界と歌姫の果実/iOS・And)

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フジゲームスがおくる群像劇RPG・アルカラストより、

柳川剛作曲、『Laplace's Room』。ラプラスの間で流れます。

幻想水滸伝のクリエイターを起用したスマホ向けのRPGとして、当初はフジゲームスが運営し、後にアピリッツにサービス移管された本作。破壊と創造のサイクルによって成り立つ無数世界を舞台に、ウロボロスによって強引に歪められて正しい終焉を迎えられなくなった7つの世界を在るべき形へ還すため、破壊者の主人公が導くことになる。それぞれの世界はパラレルで、世界ごとに切り口の異なる物語がエンディングに至るまで用意されている。戦闘システムは6人編成のセミオートバトルで、任意のタイミングでスキルを発動させる能動的な操作が含まれるほか、絆で結ばれたユニット同士でかばったり必殺技を放ったりする要素がある。通常のバトルに加え、戦争という特殊な戦闘形態があり、大規模な部隊を率いて戦場の趨勢を見極めつつ戦うことになる。そのほか、活動の拠点となる方舟におけるキャラとの交流要素、キャラ間の関係を掘り下げる専用の掛け合いボイスなど、群像劇らしさを引き立たせるシステムが散りばめられている。ゲームバランスやテンポはややシビアで育成に根気を要するが、ファンタジーの雰囲気をよく味わえる仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは古代祐三氏、柳川剛氏、山根ミチル氏。古代氏は自身が代表を務めるエインシャント所属の作曲家で、柳川氏はエインシャントの外部協力スタッフである。山根氏はフリーランスの作曲家で、コナミ在籍時代に幻想水滸伝シリーズでの作曲経験がある。本作では大まかに分けて、山根氏がメインテーマを、古代氏が重要な戦闘曲を、柳川氏がシナリオ関連のBGMとその他の戦闘曲を手がけている。ファンタジーの作風に見合った重厚なオーケストラや幻想的な民族音楽を軸に、多層的な世界観を彩る上質なサウンドが揃っている。サウンドトラックにはエンディングテーマのShort ver.も含めて収録されているが、オープニングの主題歌はインスト版のみの収録となっている(別途、担当アーティストによるボーカルコンセプトアルバムがあり、そちらに収録されている)。

ラプラスの間で流れるのがこの曲である。拠点である方舟の地下にある施設で、作中のBGMを鑑賞したり変更したりできるサウンドルームのような機能を持つ。冴え渡るリコーダーの主旋律に、温かく寄り添うリュートの伴奏、リズミカルに響く華やかなコーラス、愉しげなタンバリンが重なり合うことで、風情あふれる素朴な響きを生み出す。メロディーそのものは牧歌的でノスタルジックな印象を纏っているが、コーラスによって浮世離れしたような霊妙な雰囲気を形作っていて、郷愁を誘うと同時に神秘に感じ入らせてくれる。1ループは短いが、快く心に残る一曲である。

良い音色の組み合わせですね。曲の長さもちょうどいい感じです。