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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1239 『マサラタウンのテーマ』(増田順一/ポケットモンスター 赤・緑/GB)

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ゲームフリークがおくる育成RPGポケモンより、

増田順一作曲、赤・緑の『マサラタウンのテーマ』。マサラタウンで流れます。

ゲームボーイ後期のRPGにしてポケモンシリーズの第1作にあたる本作。ポケットモンスター、縮めてポケモンと呼ばれる不思議な生き物が暮らすカントー地方を舞台に、主人公は博士に託された最初のポケモンと図鑑とともに旅立つことになる。モンスターボールという捕獲道具を用いてポケモンを捕まえ、最大6匹(先頭1匹・控え5匹)で戦わせ、旅のお供として成長していく、という育成RPGの基本が1作目にして確立された点が特徴である。ポケモンの総数は150+幻1匹、バージョン別で出現するポケモンが異なるほか、なかには特殊な進化を遂げる例があるため、通信ケーブルを介してプレイヤー間で交換し合う楽しみを味わえる。ジム巡り、ライバル対決、悪の組織との抗争など、冒険を彩るドラマも充実している。ゲット&バトルの醍醐味に満ちたジャンル開拓的な仕上がりとなっている。後にマイナーチェンジの青とピカチュウが登場したほか、GBA向けのリメイク(FRLG)、ピカチュウ版を基にしたスイッチ向けの再リメイク(ピカブイ)が発売された。

本作の音楽を担当するのは増田順一氏。ゲームフリークに所属するクリエイターで、現在に至るまでポケモンシリーズの中心人物を務めている。本作では音楽のほかにプログラマーとしても関わっている。FRLGではアレンジおよび新規作曲として一之瀬剛氏と青木森一氏が、ピカブイでは景山将太氏が携わっている。本作では、制約の多いGB音源のなかで、日常感のある朗らかなものから、冒険感のある勇ましいもの、緊張感のあるシリアスなものや不気味なものまで、実に多彩で表現力豊かな楽曲が揃っている。サウンドトラックについては、GB音源の原曲群に鳴き声等を収録したもの、一部原曲とFRLGのアレンジを収録したもの、ピカチュウ版原曲とピカブイのアレンジを収録したものなどが存在する。

マサラタウンで流れるのがこの曲である。主人公の故郷である閑静な田舎町で、冒険の始まりの地である。南側に水路があり、開始時点では進む術がないが、冒険を経ることで後々進めるようになる。オルゴールか鉄琴を連想させる優しくきめ細やかな高音のメロディーが印象的で、その下でオーボエクラリネットか何らかの木管楽器を彷彿させる矩形波の伴奏が緩やかに付き従う。慈悲深く労わるような聴き心地がある一方で、17秒頃から中音域の副旋律が勢いづいて瑞々しい響きを帯びるようになるなど、門出の気分を後押しする快さがある。全体を通して旅立ちの場所であると同時に帰るべき場所でもあると実感させてくれる曲調に仕上がっている。看板に記された「マサラは まっしろ はじまりのいろ」の説明通り、新鮮で無垢な雰囲気が漂う一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。何度もアレンジされてて、金銀(下記動画の1:12~)はすこし賑やかな、FRLG(編曲は一之瀬さん、2:36~)は長閑で上品な、HGSS(橘田拓人さん、4:09~)は牧歌的な、ピカブイ(景山さん、5:09~)は清涼感のあるオーケストラ仕立てです。あわせてどうぞ。

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