VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1258 『信念 Keep The Faith』(陳姿樺/Dusk Diver 酉閃町/PC)

www.youtube.com

JFI Gamesがおくるアクション・Dusk Diverより、

陳姿樺作曲、『信念 Keep The Faith』。本作の主題歌で、ラスボス戦の後半で流れます。

台湾の開発会社・JFI Games(競鋒國際)の新作として登場した本作。実在の台湾の街・西門町を舞台に、平凡な女子高生だったはずのユモは、逢魔ヶ時にあたる酉の刻に形成される裏世界・酉閃町に迷い込み、守り神の力を吸収する異能に目覚めたことをきっかけに、厄禍と呼ばれる敵に立ち向かうことになる。日本のアニメやサブカルチャーの影響を色濃く受けた3Dアクションゲームで、現実と異世界を行き来して物語を進める形式を取っている。中国語音声に加えて日本語音声も収録されている。主に西門町での探索パートと、酉閃町での戦闘パートに分かれていて、前者は忠実に再現された街並みを散策して食事したり仲間と交流したりできる一方で、後者は守り神の力を借りて敵を倒していく。強・弱攻撃を組み合わせた近接格闘を軸に、守り神を召喚する必殺技や、緊急回避、D武装(ゲージ満タンで一定時間パワーアップ)などを駆使して戦うことになり、派手なアクションでどんどんコンボを繋げるスタイルを特徴としている。敵が硬めに設定されている都合上、戦闘は一本調子になりがちな側面があるほか、全体のボリュームは薄めだが、現代台湾×アニメ風のスタイリッシュな世界観を堪能できる仕上がりとなっている。後にスイッチやPS4に移植された。

本作の音楽を担当するのは主にJFI Gamesの内製サウンドチーム。具体的なスタッフ名はクレジット等で未記載である。ボーカル曲には台湾のエモーショナルパンクバンド・Go Go Rise(美好前程)、同じく台湾のロックバンド・Rain and Picture、そして日本版のイメージソングとしてshade氏がそれぞれ楽曲を提供している。本作の音楽はギターを用いたハードでパワフルなサウンドを中心に、ものによっては現実世界の日常を彩るポップなサウンドも取り揃えられている。サウンドトラックは未発売だが、主題歌のシングル等は配信されている。

ラスボス戦の後半で流れるのがこの曲である。Go Go Riseの楽曲で、同バンドの女性ボーカルである故・Mei(陳姿樺)氏が作曲して歌い上げる中国語の主題歌である。シンバルを派手に鳴らすイントロで始まり、ドラムスとギターを加えて徐々に疾走感を増していく。22秒頃から先立って歌詞を伴わない形で歌声が入って臨場感を高め、42秒で本格的に唄が乗ると、その唄の響きは力強いながらもどこか切ないような心の機微を感じさせる。1分過ぎのフレーズ終わりでギターが尖った音色を奏でて準備を整えると、続くサビは憂いを帯びつつも華麗な盛り上がりをみせる。特に1分13秒の「我的心(wǒ de xīn/私の心)」と1分33秒の「我的信念(wǒ de xìnniàn/私の信念)」で、同じ旋律に対して似た発音の歌詞を並べるも、きっちり二度目で曲名を回収するあたりが印象深い。また、唄だけでなく間奏部分における荒ぶるギターも強い存在感を放っている。二回目のサビがいっそう激しく響き渡り、間奏を経た後、3分23秒から一転して静かになる。終盤に向けてまた勢いを取り戻すが、やがて収束していく。感情的であると同時に非常に骨太な一曲である。

D武装時はこれのオフボーカル版が流れます。中国語には詳しくないですが、どんな困難に直面しても信念を貫く、みたいな内容の歌詞のようです。良いと思います。