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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1270 『Stickerbush Symphony』(David Wise/スーパードンキーコング2 ディクシー&ディディー/SFC)

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レアがおくるアクション・スーパードンキーコングより、

David Wise作曲、2の『Stickerbush Symphony』。

3-6「とげとげタルめいろ」をはじめとする茨系のステージで流れます。

スーパードンキーコングシリーズの2作目にあたる本作。今度のドンキーコングは、当の本人が敵のキャプテン・クルールに攫われてしまったことを受け、ディディーコングとガールフレンドのディクシーコングが救出に向かうことになる。前作でみられたハイレベルなビジュアル表現と骨太なアクション性を踏襲・強化しつつ、本作では身軽なディディーが主役になり、新たな操作キャラとしてポニーテールを使った攻撃や滞空性能を持つディクシーが加わった。前作同様、ステージ攻略のお供として騎乗できたり手助けしてくれたりするアニマルフレンドが登場するが、本作では種類が増えたのに加え、自らアニマルに変身して道を切り拓く場面もある。また、各ステージに隠されたコインを探すやり込み要素も備えられていて、通常のプレイでもギミックの多彩さやゲームバランスゆえに歯応え十分だが、遊び方次第でさらに味わい尽くすことができる。難易度含め作品全体が高い水準でまとまった仕上がりとなっている。後にGBやGBAに移植されたほか、バーチャルコンソール経由でWiiWiiUNew3DSに、オンライン加入者向けにスイッチでも配信された。

本作の音楽を担当するのはDavid Wise氏。当時レアに所属していた作曲家である。前作や次作では複数の作曲家との共作だが、本作では氏が単独で手がけている。シリーズ通しての魅力として音楽の秀逸さが挙げられるなかで、本作も例に漏れず効果音まわりや環境音の扱いも含めてサウンド面が充実している。アンビエント、バップ、電子音楽など、ジャンル横断的で型に嵌まらない楽曲が揃えられている。ステージクリア時などの短いジングルに関しても操作キャラやステージごとに響きが細かく調整されている点が印象深い。サウンドトラックは海外のほか国内でも発売されているが、一部未収録曲がある。曲名の表記は作中のミュージックテストの名称、海外発のCDに収録された正式名称(英語)、国内の名称(日本語)など、媒体によって多岐にわたるが、ここでは英語の正式名称に倣うものとする。

3-6「とげとげタルめいろ」や4-3「スコークス ライド」などの茨が生い茂るステージで流れるのがこの曲である。『BRAMBLES』『Bramble Blast』『とげとげタルめいろ』などの別名でも知られる。空間ごと包むように響くシンセパッドに、マリンバと思しきマレット系の音色を組み合わせることで、冒頭から非常に独特な、癒しと切なさと好奇心とが綯い交ぜになった心地良いアンビアンスを醸す。10秒頃から徐々に音数を増やして音の世界へと誘うような印象を与え、その印象が一通り浸透し切った20秒過ぎから静かに散りばめるようにしてピアノやエフェクトが添えられる。40秒頃からやおら加わる主旋律は、サックスにも鍵盤ハーモニカにも聴こえる奥深い響きを帯びている。その後、1分8秒という遅い段階でパーカッションが参戦すると、実はここに至るまでが前奏だったと気付かされ、以降の演奏がいっそう心に強く響くようになる。曲全体を通して普遍的にみられることだが、たとえば1分18~28秒でうねりを利かせたり、1分48秒頃からの主旋律にビブラート(音色の揺れ)をかけたりしている点が、音の表現力と没入感を高めている。シリーズおよび作曲者のキャリアを代表するにふさわしい、驚異的な精彩に富んだ一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。有名どころのアレンジとして、スマブラXなるけみちこさん編曲『とげとげタルめいろ』を挙げておきましょう。ピチカート、ギター、チェロといった弦楽器メインで、とても素敵です。あわせてどうぞ。

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