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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1276 『紅屋・凛』(高田征典/天誅 紅/PS2)

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フロムがおくる忍者アクション・天誅より、

高田征典作曲、紅の『紅屋・凛』。凛編のボス戦で流れます。

ステルス系の忍者アクション・天誅シリーズのスピンオフ第1弾にあたる本作。諸国を渡り歩く女忍者・彩女は、旅の途中、焼き討ちに遭った隠れ里に通りがかったところ、里の住人にして後に始末屋となる少女・凛に襲撃犯だと誤解されたことをきっかけに、二人のくノ一が復讐と真相をめぐって戦うことになる。それぞれの視点で物語を進めるダブル女性主人公制を採用していて、導入演出や次回予告など随所で時代劇を意識した語りや映像表現を用いている点が印象的である。気付かれていない敵を一撃で仕留めるシリーズおなじみの忍殺システムについては、位置取り次第で連続で二人捌ける忍殺乱舞という新要素が加わった。全体的にキャラの移動速度がゆったりめで処理まわりがやや重いほか、ちょっとの動作でも敵に気取られやすいため、良くも悪くも独自の緊張感が漂うゲームバランスを誇る。おまけの遊びとして指南モードや大将戦(ボス再戦)、紅の刃(次々と敵を倒す)なども搭載されている。本編シリーズのような対戦・協力プレイはなく、ボリュームは抑えめだが、外伝ならではの一風変わった渋さと華やかさがある仕上がりとなっている。後にPSPに移植された。

本作の音楽を担当するのは末永浩一氏、高田征典氏、土屋昇平氏、星野康太氏。イメージソング(OP)の作曲に朝倉紀行氏も携わっている。また、作中のスタッフロールにはサウンドセクション欄で一木裕樹氏と神田有士氏の名前も確認できるが、作曲はおこなっていないようである。シリーズサウンドの生みの親であり外部のメガアルファ所属の朝倉紀行氏を除き、いずれも当時フロムに所属していたか現在も所属している作曲家である。このうち本作では高田氏がサウンドプロデューサーを、末永氏がリードコンポーザーを務めている。本作の音楽は例によって和を主軸に据えつつ、ギターやシンセ、打楽器などを散りばめて独特な侘びを体現したハイブリッドなオリエンタルサウンドが揃っている。サウンドトラックにはイメージソングのロングバージョンも含めて収録されている。

凛編のボス戦で流れるのがこの曲である。凛は本作の主人公にして紅屋(べにや)に連なる始末屋の少女である。彼女の華麗な激闘を彩るにあたって、イントロから刺々しく掻き鳴らされるエレキギターに、天高く舞うように奏でられる龍笛と思しき笛の音が響き合うことで、影に生きる者にふさわしいシビアでハードな雰囲気と、くノ一らしいオリエンタルでエレガントな雰囲気が綺麗に融合している。3秒頃から笙が加わって特徴的な和音を響かせて雅楽に通ずる荘厳な空気を生み出すが、相変わらずギターはその荘厳さに呑まれることなく激しく鳴り続け、笛は高音を中心にして装飾的な調べを披露する。24秒から打楽器の勢力が増して旋律が変化が生じ、35秒以降には笛が高音だけでなく低音もしっかり担うようになるなど、全体的に似通ったフレーズが続くなかでも見せ場に事欠かない。特に1分11秒には琵琶を彷彿させる音色が一瞬だけ入り、間を置いて1分43秒で再び姿を現すなど、楽器の使いどころが印象深い。殺伐としつつ艶やかな響きを帯びた一曲である。

いいですね、戦闘曲として魅力的なのはもちろんですが、これを流しておくと普段の雑事の始末とか片付けが捗りそうです。