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#1277 『勇者の故郷』(小高直樹/アルバートオデッセイ2 邪神の胎動/SFC)

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サンソフトがおくるシミュレーションRPGアルバートオデッセイより、

小高直樹作曲、2の『勇者の故郷』。チベリスの村で流れます。

サンソフト製の一風変わったシミュレーションRPGアルバートオデッセイシリーズの2作目にあたる本作。前作主人公の勇者・アルバートらが活躍した戦役から10年後を舞台に、かつて神聖十字軍を率いたライアモス伯爵の遺児である青年・ディーンは、追われる身の王女・ユナとの出会いをきっかけに、やがて大きな戦いに巻き込まれることになる。前作の結末を一部調整しつつ、概ね出来事の経緯を踏襲している続編である。前作同様、拠点内(街や建物など)は自由に探索できるRPG形式で、フィールドやダンジョン内はユニットを動かすシミュレーションRPG形式で展開する。前作では1ターンの間に移動・攻撃・特殊技能・道具を一回ずつ使えたが、本作では取れる行動がいずれか一つに変更されたほか、通常攻撃が必ず二段攻撃になってそれぞれに命中判定が導入された。とにかく敵の数が多い点が特徴で、前作から1ターン中の手数が減ったことも関係して、いかに主人公を庇いつつ敵戦力を削って進軍するか、地道な戦略が求められるようになった。そのほか前作と比べて大小様々な仕様変更が施されたが、相変わらずやや変わった歯応えのある仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは小高直樹氏。80~90年代のサンソフト製の作品ではおなじみの作曲家で、ことアルバートオデッセイシリーズにおいては後発の外伝も含めてすべて単独で作曲をおこなっている。前作で印象的だったオーケストラ風の幻想的なサウンドは本作でも健在で、前作からのアレンジもすくなくない。サウンドトラックは本作単体で収録したものと、サンソフトミュージックコレクションの一環として前作や弁慶外伝、さらには本作の未使用曲とともに収録したものがそれぞれ存在する。

チベリスで流れるのがこの曲である。チベリスは前作主人公・アルバートの故郷で、大聖堂が建っている点が特徴だが、基本的には非常につましい田舎の村である。前作のイベント曲『神聖王ゴートに捧ぐ』のアレンジで、音程が調整されている。ぽろぽろと零れるように響くリュートで始まり、6秒からフルートが玉を転がすような音色を紡ぎ出すと、哀しいと同時に心鎮まる調べを奏でる。イントロやフレーズの合間など、リュートのみが響く場面では、長めの音価でゆとりのある音色を奏でるが、フルートの伴奏を務める際は常に8分音符のアルペジオを奏でる。24秒や37秒など、ところどころでフェルマータ(音符や休符を程よく伸ばす/拍を一瞬止める)を置くことで、より深く、より直感的に旋律を耳で追って響きの美しさに浸らせてくれる。心の奥に染みるような一曲である。

前作のチベリスのBGMは『チベリス我が故郷』ですが、それのアレンジではなく、あえてイベント曲のほうを本作で村曲に昇格させるあたり、すごく素敵ですね。『神聖王ゴートに捧ぐ』と『チベリス我が故郷』、あわせてどうぞ。

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