VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1278 『レッドシティのテーマ~風にむかって』(田辺文雄/チョロQワンダフォー!/PS)

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タカラがおくるレースゲーム・チョロQより、

田辺文雄作曲、ワンダフォーの『レッドシティのテーマ~風にむかって』。

レッドシティで流れます。

タカラのぜんまい式ミニカーを題材とするゲーム作品のうち、PS向け第4弾でE-GAMEが開発した本作。主人公のチョロQは、うっかり壊してしまった優勝トロフィーを直す方法を探すべく、様々な街や時代を巡って冒険することになる。ゲーム性の根幹は従来通りのレースゲームだが、本作では物語に沿ってあちこちを旅して住民(主人公含め車たちが自我を持って暮らす世界を描いている)と交流したり各種パーツを集めたりするというRPG色の強いゲームサイクルを導入している。システム面では街中でもレース中でも影響するものとして燃料の概念が加わり、燃料切れになると走行速度が激減してしまうため、定期的な補給が必要となった。全体的な車の挙動や難易度は慣れを要するバランスに調整されているほか、大小様々なイベントをこなすことで入手できるスタンプ集めなどのやり込み要素が充実している。従来とは毛色が異なるが、なかなかじっくりたっぷり遊べる仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは田辺文雄氏。当時E-GAMEに所属していた作曲家である。それ以前にはタムソフトに在籍していて、チョロQシリーズにはタムソフトが開発を務めていた作品も含めて初代から携わっている。本作ではレース用のBGMはもちろん、RPGらしい探索要素にあわせて街や施設のBGMも用意されている。傾向としてはシンセやオルガン、ハーモニカなどを駆使した明るめの曲調が多く、なかには緊張感の走るスリリングな楽曲も存在する。サウンドトラックはゲーム発売後まもなく登場した。

レッドシティで流れるのがこの曲である。レッドシティはゲーム開始地点にあたる街で、傾斜のある落ち着いた街並みが印象的な市街地である。出だしからシンセブラスやクラビネット、オルガンなどが楽しげに合奏し、胸が弾むような快活な響きをもたらす。全体的に、底抜けに明るいけどやや大人しめなジャズ・ファンクのような雰囲気が漂っていて、聴いていると元気が湧いてくるのと同時に安堵感を抱かせてくれる。とりわけ58秒からのフレーズは、シンセブラスに追随するようにオルガンが奏でられ、その下で変わらずクラビネットが小刻みに飛び跳ねるように響くことで、今まで以上に耳に残る、陽気で長閑でちょっぴり切なさ薫る印象を与える。最初の街に誂え向きなチャーミングな聴き心地がある一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。嬉しくなる曲ですね。