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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#366 『法界の火』(ZUN/東方星蓮船 ~ Undefined Fantastic Object./PC)

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上海アリス幻樂団がおくる弾幕シューティング・東方Projectより、

ZUN作曲、星蓮船の『法界の火』。6面道中で流れます。

東方Project第12弾として2009年の夏コミC76にて頒布された本作。春先に突如現れた空飛ぶ宝船を追って、おなじみの博麗霊夢霧雨魔理沙、さらには新たに自機に加わった東風谷早苗の三人の主人公たちがまだ見ぬ宝を夢見て奮闘することになる。本作固有のシステムとしてベントラーとUFOというものがあり、特定の敵がドロップする三色のベントラーを集めることで、アイテムを放出するうえに撃破するとボーナスがもらえるUFOが出現する点が特徴的である。そのほか、スペルカードシステムが復活するなど、意欲的な要素を多数織り込んだ仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのはZUN氏。おなじみ上海アリス幻樂団の主宰で、作曲はもちろん開発全般を手がけている。本作では春という季節にあわせて、基本的には明るく清々しく、それでいてときどき憂愁を湛えたような雰囲気の楽曲が揃っている。例によって作中のミュージックルームで楽曲ごとに氏のコメントが付されている。

6面、すなわちラストステージの道中にて流れるこの曲は、そうした春爛漫の気分からは程遠いが、クライマックスというシチュエーションに見事に合致した緊張感あふれる一曲である。出だしから不吉に鳴り響く心臓の鼓動音は、雑魚敵の弾の発射音とリンクしていて、効果音なしの特殊な状況下が、ピアノとトランペットによる流麗な旋律をいっそう美しく引き立てる。曲の終わりに差し掛かる頃にゲーム内では謎の光の球が明滅し、ラスボス戦に移行するという演出もまた印象的で、来る『感情の摩天楼』に向けての最後の心構えを養わせてくれる。曲名にある「法界(ほっかい)」とは「意識の対象となるすべてのもの」、つまりは全宇宙を意味する仏教用語で、厳かな曲調をとてもよく表している。

心音+シューティング+クライマックスといえば真っ先に思い浮かぶのは河本圭代さん作曲のレイストームの『INTOLERANCE』、おそらく意識しているでしょうね。『感情の摩天楼 ~ Cosmic Mind』と『INTOLERANCE』、あわせてどうぞ。

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