VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1319 『真夜中のフェアリーダンス』(ZUN/妖精大戦争 ~ 東方三月精/PC)

www.youtube.com

上海アリス幻樂団がおくる弾幕シューティング・東方Projectより、

ZUN作曲、妖精大戦争の『真夜中のフェアリーダンス』。3面で流れます。

同人の弾幕シューティングシリーズ・東方Projectの第12.8弾にあたる本作。冷気を操る妖精・チルノは、ひょんな理由でサニーミルクら光の三妖精に住処を破壊されたので、その報復として宣戦布告することになる。漫画「東方三月精」をベースにしたスピンオフで、敵弾を凍らせることができるチルノを主人公(自機)として全3面+おまけのEXステージを攻略していく。ステージの攻略順序を選べる仕組みを採用していて、昼→夕方→夜という流れで同じロケーションでも時間帯に応じたステージ内容の変化・ルート分岐(計6パターン)が発生する。本作の特徴は、ショットキー溜め撃ちでアイスバリアを発動できる点で、このバリアに触れた敵弾は凍り付き、凍った敵弾に触れた別の敵弾も連鎖的に凍り、凍った敵弾はやがて消滅するため、いかに弾幕が濃かろうと凍らせればよい。画面上で凍らせた面積に比例してショットレベルが上昇することから、なおさら凍らせるメリットは大きい。とはいえ、バリア発動には十分なこおりパワー(攻撃を当てる、敵弾にカスるなどして蓄積される)が必要で、敵弾のなかには凍らない炎弾や氷を貫通するレーザーも存在するため、実際はそう一筋縄ではいかない。弾幕シューらしからぬ大胆なシステムと、弾幕シューらしい効率的な立ち回りを求められるゲームデザインが両立した意欲作に仕上がっている。

本作の音楽を担当するのはZUN氏。おなじみ上海アリス幻樂団の主宰で、例によって作曲を含む開発全般を一手に担っている。本作では妖精が主役ということで、音楽はいつも以上に剽軽な印象のあるものが用意されている。氷のイメージに寄り添う冷涼なピアノ、軽やかなトランペット、それと並行して独特な熱さと怪しさのあるボス戦BGMなど、印象的な楽曲が揃えられている。楽曲のなかには、元々は漫画用に書き下ろされた楽曲が本作に使用された例や、過去作からのアレンジ、アレンジを意識したものなども含まれる。シリーズ恒例の作中のミュージックルームは本作でも健在で、楽曲ごとに氏のコメントが付されている。

3面で流れるのがこの曲である。前述の通りステージはルート選択制のため、ロケーションではなく時間帯に紐づく形で道中曲があてがわれていて、この曲はラストを飾る夜のテーマである。「ちょっとだけジャズィでアダルティ」と語る通り、小粋なピアノを軸として癖になるようなグルーヴ感を漂わせる曲調に仕上がっている。はっきりと派手に刻まれるビートの上に、低音でぐっと抑え込んだような渋いベースを載せ、それとは対照的に一切抑制が利かないような調子でピアノが演奏することで、非常にリズミカルで気忙しい雰囲気を漂わせる。27秒でトランペットの象徴的な音色が入るのに加え、1分30秒頃でシリーズ通してのメインフレーズ(秋霜玉の『シルクロードアリス』を代表例とする通称「いつもの曲」)が挿し込まれる点が印象深い。曲を通して細かくテンポが上下する点や、定期的に「コーン!」と鳴る効果音の迫力とも相まって、耳から離れない一曲である。

漫画のOriental Sacred Place第2巻の付録CDにセルフアレンジというか、軽く響きを調整したリミックス版があります。あといつもの曲の参考例もあわせてどうぞ。

www.youtube.com

www.youtube.com