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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1318 『ラマダ寺 ~ 無念無想』(服部隆之/アークザラッド 精霊の黄昏/PS)

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SCEがおくるRPGアークザラッドより、

服部隆之作曲、精霊の黄昏の『ラマダ寺 ~ 無念無想』。ラマダ寺で流れます。

光と音のRPGという謳い文句で知られるアークザラッドシリーズのうち、PS2進出作にあたる本作。ナンバリング3作目から千年後を舞台に、資源枯渇で苦しむ人間と魔族にもたらされた新たなエネルギー源・精霊石をめぐり、種族の異なる二人の主人公がそれぞれ立ち上がることになる。人間側と魔族側のダブル主人公制で、双方の視点で交互に物語を追体験していく形式を取っている。ハードの移行に伴ってグラフィックはフル3Dとなり、探索用のフィールドはもちろん、戦闘も従来のマス目上で展開するタイプから3D空間で表現されるタイプに変更された。これを受けて、攻撃範囲のバリエーションが増えたり技のエフェクトが派手になったり、柱や破壊可能なオブジェクトが配置されたりするようになった。技を発動するには精霊石を都度消費するため、アイテムやお金と同じように自ら補充してリソース管理する必要があるほか、全般的に戦闘動作が緩慢であるなど、ややスローペースで手間と時間がかかる。一方で、種族ごとの生き様、特に魔族側のドラマが充実している点が特徴である。危なげない水準でまとまった仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは櫻井浩司氏、服部隆之氏、福島祐子氏。主題歌はハラダタカシ氏が作編曲および後述の楽器の演奏を、故・河井英里氏が歌唱を務めている。櫻井氏はフリーランスで、服部氏は音楽制作会社・フェイス音楽出版に、福島氏はミラクル・バスに所属する作曲家である。ハラダ氏はオンド・マルトノ(フランス発の電波楽器)奏者として名高い同楽器の第一人者である。本作ではナンバリング3部作で作曲を手がけた安藤まさひろ氏は不参加(流用曲のみ)で作曲陣が一新された。そのためか、雄大なオーケストラとワールドミュージックを軸とする音楽性は継承されているものの、全体的な聴き心地は今までとすこし毛色が異なり、シックな色合いが強まったように感じられる。サウンドトラックは主題歌入りで発売されているが、未収録の曲が多く、これらは後に続編のサントラで収録された。

ラマダ寺で流れるのがこの曲である。初代から登場するシリーズ恒例の寺で、境内では僧兵たちが絶えず掛け声をあげて拳法の修行に励んでいる。そのため作中では曲が流れる傍らで一定間隔で「ヤーッ!」という音声が入ることになる。無念無想という副題から察せられる通り、この曲は非常に粛然としたオリエンタルな曲調に仕上がっている。高らかに舞うように奏でられるオーボエの旋律に、静かに融け込むように響くハープやシンセ、ときに11~14秒や25~27秒でみられるような琴のトレモロを絡み合わせることで、聴いているだけで心身が清められるような神秘的な気分に浸らせてくれる。浮世離れしすぎないように規則的にパーカッションを刻んだり、24秒や38秒など要所要所で金属音をチリンと鳴らしたりして曲の雰囲気を整えている。かと思いきや、54秒から耳慣れないスペーシーな音色が一時的に加わり、それを境にオーボエがミステリアスな響きを帯びるようになる。曲終盤の1分20秒には打楽器の勢いを増して只ならぬ気配を漂わせるが、その後は不意に収束する。歴史の長い寺を彩るにふさわしい、安らかだが凄みのある一曲である。

上記動画は1ループしかないですが、ループの際はそのまま冒頭から再生されます。ラマダ寺で流れる曲というと過去作だと『グレイシーヌ』か、初代の場合はそこの師範のテーマである『イーガ』が状況によって流れます。どちらも圧の強い曲ですが、個人的には本作の曲が作中の掛け声の影響で一番印象深いです。あわせてどうぞ。

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