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#1478 『ACT 2-1 侵攻』(迫田敏明・竹内啓史・田中勝巳・長尾亮利/精霊戦士スプリガン/PCECD)

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コンパイルがおくるシューティング・精霊戦士スプリガンより、

迫田敏明・竹内啓史・田中勝巳・長尾亮利作曲、『ACT 2-1 侵攻』。

2面の前半で流れます。

コンパイルが開発し、ナグザットが販売するタイトルのうち、ナグザット主催のゲーム大会・サマーカーニバルの91年度対象作品にあたる本作。魔法と精霊の世界を舞台に、他国へ侵略を繰り返すブライスバラ帝国を打倒すべく、精霊国家シースフェルが擁する精霊甲兵のスプリガンが出撃することになる。メカ×ハイファンタジーの世界観が印象的な全7面構成の縦スクロールシューティングである。操作体系は十字キーでの移動、2ボタン(ショットとボンバー)、自機の速度変更から成り、物語に沿って進めるメインモードの他にスコアアタックとタイムアタックが収録されている。特筆すべきは精霊を軸とするシステムで、自機は道中に出現する地水火風の精霊球を最大3つまでストックし、その組み合わせ次第で計29種類のパワーアップ形態を取ることができる。精霊球はボンバーの役割も担っていて、精霊球のストックを1つ消費する代わりに画面上の敵を一掃させられる。CD-ROM²の性能を活かしたビジュアルシーンが充実しているのも特徴で、オープニングや幕間などでボイス付きの演出が用意されている。また、グラフィックはビビッドカラーで活き活きと描かれていて、背景のつくり込みや巨大ボスのデザインが目を惹く。全体的に緻密な立ち回りよりも殲滅の爽快感を重視した豪快な仕上がりとなっている。後にPCエンジンminiに収録された。

本作の音楽を担当するのは迫田敏明氏、竹内啓史氏、田中勝巳(勝己)氏、長尾亮利氏。いずれも当時コンパイルに所属していた作曲家である。このうち長尾氏は本作のスタッフロールでは亮利名義を用いているが、後年では英之助名義を用いている。スプリガンシリーズには竹内氏が続編のmark2でも引き続き作曲していて、長尾氏はmark2の効果音を手がけている。また、本作は当初アレスタシリーズの一環として制作されていたらしく、迫田氏と竹内氏は本作以前に同シリーズでの作曲経験があり、田中氏と長尾氏は本作以降で同シリーズに一部携わっている。本作ではぎらりと光沢のあるサウンドが揃っていて、ファンタジーとSFのいいとこどりをしたノリの良さと妖しさと格好良さが感じられる。サウンドトラックについては、続編や他の作品と合わせてナグザットシューティングコレクションに本作のBGMが収録されている。

ACT 2「侵攻」の前半で流れるのがこの曲である。2面前半は高速スクロールで森の上空を駆け抜けていき、水場に出るとしばらく低速スクロールした後に滝を駆け上がり、やがてダムに設置された砲台を相手に中ボス戦に挑むことになる。目まぐるしく移り変わる景色に沿うように、この曲はときに渋く、ときにざわざわとした感覚を漂わせ、ときに開放的なシンセで魅せてくれる。冒頭5秒ほどはアグレッシブなビートに低音のベース、時折合いの手を入れるタンバリンを組み合わせてストイックな第一印象を与えるが、次第に音数が増えていくことで色鮮やかな印象を帯びていく。とはいえ、賑やかな雰囲気を纏うようになっても、後ろで刻まれるリズムはほとんど常に一定である。48秒でオーケストラヒットを鳴らすと、それを皮切りに再びリズムが目立つようになり、53秒以降で聴き馴染みのあるフレーズに回帰する。しかしループに突入したわけではなく、前回と同じであれば1分35秒でオーケストラヒットで仕切り直すはずだが、再度メロディーを反復して爽快な空気感を保ち続ける。爽やかだが粘り強く、緊張感と清涼感のバランスが優れた一曲である。

砲台戦を挟んで後半になるとプログレ系戦闘曲みたいなのが流れ出します。『ACT 2-2』、あわせてどうぞ。

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