VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1701 『Escape~Area3』(小倉努/シティボンバー/AC)

www.youtube.com

コナミがおくるカーアクション・シティボンバーより、

小倉努作曲、『Escape~Area3』。3面で流れます。

車を題材にしたゲームのなかでも逃走に焦点を当てた本作。プレイヤーは怪盗306号となり、悪名高いカジノから奪った売上金を抱えてギャングたちの追跡を振り切ることになる。周回制の全5面構成のトップビュー型アクションで、愛車を駆って制限時間内に衝突や発砲などなんでもありな連中から逃げおおせることが目的である。操作は移動や加速・減速が可能な8方向レバーと、ブレーキ・ジャンプ・ショットの3ボタンから成る。道中で入手したアイテムによってロケットランチャーをぶっ放したり、回転ノコギリで前方を強引に切り拓いたりすることができる。通常の市街地の他にも荒野や沼地など癖のある地形が多く、単に車を走らせるのではなくジャンプでダイナミックに乗り越えたり敵車を撃破したりするエクストリームスポーツ的な醍醐味がある。総じて痛快なインパクトのある仕上がりとなっている。後にアーケードアーカイブスの一環としてスイッチやPS4に配信された。

本作の音楽を担当するのは小倉努氏。当時コナミに所属していた作曲家で、きんごろう名義などで知られる。本作にはスタッフロールがないが、サウンドトラックなどを通じて氏が初期に担当したことが判明している。一般的なレースゲームの枠組みに囚われないカーチェイス&シューティング風の雰囲気を反映して、本作の音楽はぐいぐい響く熱血なサウンドが揃っている。コナミ矩形波倶楽部の十八番とも言えるスピーディーなノリが出ていて、かすかに哀愁薫るメロディーラインの鮮烈さと相まって良質にまとめられている。サウンドトラックは本作単体では発売されていないが、コナミの歴代作品を収めたアルバムのなかに本作の楽曲が収録されている。

3面で流れるのがこの曲である。3面には通常時と2周目以降の特定条件下とで流れる曲が変わる仕様があるが、こちらは通常時のものである。道路を直進するだけ、障害物もなくステージ尺自体も短いが、パトカーに追われたり上からヘリが妨害してきたりするせわしなさがある。そうしたなか、イントロから爆発的な勢いでギラギラ鳴らすが、5秒あたりから加わる主旋律には勢いだけでなくわずかながら悲愴感がある。息もつかせず小刻みに響き続けるベースやパーカッションのおかげで、曲全体のムードは快調な印象が保たれている。17秒には丸みを帯びた音色を取り入れて弾みをつけ、やがて24秒でサビに至ると今度は以前よりも強めに悲愴感を漂わせながら鮮やかに疾駆する。その後潔くパーカッションを利かせて37秒で1ループを締め括る。爽快な曲調のなかに逃走のドラマが感じられる一曲である。

サビには一昔前のシンセポップのような絶妙なノスタルジーがありますね。3面のもう一つの曲『Fleer』は対照的に底抜けにハッピーでコミカルな感じです。あわせてどうぞ。

www.youtube.com