アークシステムワークスがおくる2D対戦格闘ゲーム・北斗の拳より、
末村謙之輔作曲、『始まりの地』。トキのステージで流れます。
世紀末の凄絶な争いを描く人気漫画「北斗の拳」のゲーム化作品のうち、ギルティギアシリーズなどで知られるアークシステムワークスがアーケード向けに開発した本作。第一部のラオウの最期までに絞って総勢10名のキャラがプレイアブル参戦している。キャラ数はコンパクトに抑えられている分、ボイス込みで細かいモーションや原作再現要素が盛り込まれている。操作体系は8方向レバーに5ボタン(強弱のパンチ・キック+ブースト)から成り、通常の攻撃アクションのほかにボタン同時押しによる技の派生が多く用意されている。特筆すべきはゲージ消費で前方に高速移動できるブーストによる駆け引きで、技をキャンセルできる効果を併せ持つ。さらに北斗七星ゲージという減算型のゲージがあり、特定のアクションを決めることで相手の星を削り切ると一撃必殺の奥義を放てる。命中すれば一発KOできる規格外の性能だが、外すとブーストゲージやオーラゲージ(必殺技発動やガードに使う)が空になるため、使いどころの見極めが肝要である。良くも悪くも永久コンボの存在とキャラ間の格差の激しさで知られていて、かなりアグレッシブに攻めまくる破天荒なゲームバランスを誇る。総じて世紀末を体現したかのような怪作に仕上がっている。後にPS2に移植された。
本作の音楽を担当するのは末村謙之輔氏。フリーランスの作曲家で、スタジオPJという音響政策や録音用のプライベートスタジオを運営している。アーク製の作品には本作を皮切りにギルティギアシリーズにも一部携わっている。本作ではストレートにポストアポカリプティックでバイオレントな作風を反映したハードロック・ヘヴィメタル系の楽曲が多く取り揃えられている。エレキギターやオルガンを豪快に鳴らしたものが多いが、なかにはかすかに悲愴感や寂寥感を帯びたものがあり、ステージおよびステージに結び付くキャラの雰囲気に合ったサウンドを楽しむことができる。サウンドトラックは未発売だが、PS2移植版にサウンドテストが搭載されている。
トキのステージである始まりの地で流れるのがこの曲である。トキは北斗四兄弟の次兄、北斗神拳史上最も華麗な技の使い手という設定に違わず、本作における最強格キャラとして君臨している。パーカッションで溜めるイントロから始まり、6秒から苛烈なギターソロを交えて急激に畳みかけていく。普段は聖人のように高潔で慈悲深いが、この獰猛なギターサウンドはまるで内に秘めた闘気を表現しているかのようである。しばらく過激に盛り上げるが、33秒からは引き続きギターを鳴らしながらも穏やかでまろやかなメロディーを奏でる。その旋律はどことなく切なげな響きを纏っていて、あえてそうすることで再びギターが主役となって勢いづく1分20秒以降をより迫力たっぷりに印象付ける。1分29~31秒、40~42秒、52~54秒と各フレーズ終わりに変幻自在なギター捌きをみせるが、サビ直前の2分3~5秒ではギター不在でパーカッションを目立たせる構成にして、続くサビのギター捌きを力強く引き立てている。サビに至る展開はさながら受け流してから攻勢に転じる、トキの柔の拳を再現したかのようにも思える。激しい曲調のなかに比類なき流麗さがうまく融け込んだ一曲である。
この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。こうやって高速で畳みかけるさまは痛快で格好良いですね。