VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1450 『レイのテーマ』(知久光康/北斗の拳6 激闘伝承拳 覇王への道/SFC)

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武論尊原哲夫著の同名の格闘漫画を原作とする、

東映動画がおくる対戦格闘ゲーム北斗の拳より、

知久光康作曲、6の『レイのテーマ』(仮称)。レイのテーマとして流れます。

世紀末の凄絶な争いを描く人気漫画「北斗の拳」のゲーム化作品のうち、東映動画製のナンバリング6作目にあたる本作。199X年、核戦争後の暗黒時代でケンシロウら最強の男たちが覇権をめぐって闘うことになる。前作まではRPGだったが、本作では2D対戦格闘にジャンルを一新している。プレイアブルはケンシロウラオウ、レイをはじめとする計8人で、各キャラのグラフィックやモーションは緻密かつ個性的に描き分けられている。操作キャラを選んで強敵たちと順番に対戦する1P FIGHT、ローカル対戦用の2P FIGHT、自由な組み合わせで対戦するFREE FIGHT、あわせて三つのモードが収録されている。対戦ルールは制限時間なしの1本勝負で、原作再現要素として一部のキャラには特定の技が効かなかったり、しゃがみが使えないなど意図的に取れる行動が制限されていたりする。加えて1P FIGHTでは、勝利時にどれだけ自キャラの体力を残したかによってエンディングデモで対戦相手から送られるコメントが変化するなど、演出面での芸が細かい。一方で対戦バランスやシステムは良くも悪くも歪で、通常の移動は遅いがジャンプはやたら速かったり、投げ技等が存在しない都合上ガードが崩しにくかったり、コマンド入力が簡素である分だけ使える技がすくなかったりする。粗削りだが原作譲りの見た目や雰囲気を備えた仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは知久光康氏。ロックバンド・J-WALK(現THE JAYWALK)のボーカル兼ギター担当である。ゲーム音楽方面だと特に東映動画製の北斗の拳シリーズにはナンバリング2作目以降、連綿と携わっている。本作では渋く芯のあるベースラインを駆使して、独特な退廃感と重厚感のあるグルーヴィーなサウンドを生み出している。キャラごとに個性を反映したテーマ曲が用意されていて、演出面の格好良さと相まって対戦の機運をうまく盛り上げてくれる。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

レイのテーマとして、彼と対戦する際に流れるのがこの曲である。美しき長髪と悲しき宿命を持つ、ケンシロウの良き友にして南斗水鳥拳の伝承者である。本作では手刀を軸とした攻撃と高い機動力を持つキャラとして描かれている。そうしたなか、冒頭から細切れに音色を鳴らすことで、軽快であると同時に切迫感のあるスリルとオーラを醸し出している。8秒頃からにわかにドラムが勢いづくと、続けざまに低音主体のギターが加わり、本格的に主旋律が始動する。11~13秒や19~21秒でみられるように、ギュインと音階を上り下りする象徴的な音色を用いることで、悲壮感と疾走感が綯い交ぜになった独自の雰囲気を漂わせる。とりわけ25秒から即興風に音色を掻き鳴らし、さらに33秒から高速の高音を交えて盛り上がるさまは非常に特徴的で、彼の華麗かつ熾烈な動きを強く脳裏に刻み付けてくれる。まさに切れ味抜群の一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。この音色の濃さ、軽やかだけど絶妙に濃い感じが良いですね。