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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1382 『クラブマスター戦』(嶋倉一朗/ポケモンカードGB/GBC)

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ハドソンがおくるトレーディングカードゲームポケモンカードGBより、

嶋倉一朗作曲、『クラブマスター戦』(仮称)。クラブマスター戦で流れます。

ポケモンシリーズの外伝作品群のうち、ポケモンカードゲームを再現した作品として登場した本作。ポケモンカードが好きな主人公の少年は、伝説のカードの噂を聞き、これを入手すべく各地の猛者と対戦することになる。対戦ルールは多少調整されているものの大元のカードゲーム準拠で、拡張パック第1弾~化石の秘密+一部のプロモカードと本作オリジナルを加えた200種類以上のカードが収録されている。ゲームボーイでも遊べるが、ゲームボーイカラーに対応した丁寧で色彩豊かなグラフィックを楽しむことができる。作中のゲームサイクルは携帯機向けに最適化されていて、ライバルキャラと切磋琢磨しながら8つのクラブを巡り、さらにその上に君臨する4人のグランドマスターと勝負していく、という本家に近い流れを採用している。ルールの指南が充実しているほか、難しすぎずコツを掴めば有利に立ち回れる良心的なゲームバランス、カードをどんどん収集できるテンポの良さなども特徴的である。また、通信ケーブルを介して通信対戦したり、赤外線通信を介して相互にランダムなカードを入手したりできる機能が搭載されている。快適にポケモンカードゲームの醍醐味を味わえる仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは嶋倉一朗氏。当時ハドソンに所属していたサウンドクリエイターである。本作だけでなく次作でも引き続き担当することになる。本作では素朴なゲームボーイ音源の魅力を活かしたカラッと明るい楽曲を中心に、本家とは作曲者が異なる点もあってかすこし毛色の異なる新鮮なサウンドを堪能することができる。対戦時は思考力を促進させるような、ミドルテンポで激しすぎず、それでいて情熱的でもある楽曲で盛り上げてくれる。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

クラブマスター戦で流れるのがこの曲である。クラブマスターは本家のジムリーダーに相当するボスで、それぞれ得意とするタイプで固めたデッキで挑んでくる。一定間隔で低音を刻む味わい深いイントロから始まり、7秒頃からドラムを模したノイズを取り入れて勢いを蓄えていく。14秒で音階を駆け上って主旋律が加わると、音色を長めにゆとりを持って鳴らすことで徐々に盛り上げていく。緊張感は漂っているが、急かさずプレイヤーの思考のペースに合わせてくれるような印象があり、対戦に集中しやすい聴き心地を形作っている。やがて高音が目立つようになると、44秒から断続的に歯切れの良い音色を鳴らして曲の流れに変化をもたらす。曲後半となる57秒以降は、前半の緊張感から解放されて前向きで勇ましい響きが強まるようになる。伸び伸びと奏でられる高音の主旋律の傍らで、細やかに音階を上下する副旋律を添えることで、双方の旋律が綺麗に絡み合ってポジティブな雰囲気に磨きをかける。1分31秒から再び断続的に歯切れの良い音色を鳴らし、ややあって1分44~49秒で締めのフレーズを挿入すると、また曲前半でみられたような緊張感が漂い始め、次のループへと繋がっていく。心地良い緊張感と解放感がある一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。盛り上げ方が秀逸ですね。この曲の他にはライバルのテーマが好きです。非常にGB音源の使い方が巧みですね。あわせてどうぞ。

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