VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1624 『それぞれの思惑と足跡』(JynX/鏈縁霊烈傳 ~ Reactivate_majestical_imperial/PC)

www.youtube.com

トリック・ノスタルジーがおくる弾幕シューティング、連縁projectより、

JynX作曲、霊烈傳の『それぞれの思惑と足跡』。4面で流れます。

個人運営の同人サークルであるトリック・ノスタルジーの代表作であり、全編フリーで配信されている連縁project(旧:鏈縁)の第3弾にあたる本作。例年と比べて随分寒い冬を迎える无現里で、藪雨や玄鳥らがタッグを組んで異変を解決すべく奔走することになる。いつも通り全6面構成、スペルカードやフラッシュボムといった基本要素は前二作から受け継いでいるが、本作ならではの特徴として自機チェンジや霊堤瓶システムが導入されている。今回の自機は二人一組で出撃する形式で、ボムの使用や被弾によって交代するため、機体ごとの性能と場面ごとの得手不得手、パワーアップの状況などを見極めながら攻略する醍醐味を味わえる。霊堤瓶とは霊魂を集める瓶で、画面下部の控えの自機をうまく誘導して霊魂を取らせることでゲージが溜まり、一定数集まると瓶中天モードが発動する。発動中は自機に応じて特殊な恩恵を得られたり、被弾時にオートボムが発生したりして、発動時間は短いものの霊魂を集めるほどに時間が伸びる仕組みである。もとより前二作より抑えめな難易度で、アップデートによって題名の表記と合わせてさらにゲームバランスが調整された。総じて小気味良く遊べる仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのはJynX氏。トリック・ノスタルジーの主宰であり、本作の企画やプログラム、作画など開発全般を一手に担っている。本作でも例によって幻想的で昂揚感のあるメロディアスな楽曲が揃っていて、今回は冬をテーマにしていることからシンセや鈴、ピアノなど冷涼な雰囲気のある音使いが目立つ。特定のステージでは選ぶ自機によって対峙するボスが変わる分岐要素があり、ボスごとに異なる曲が用意されている。また、作中には恒例のMusicRoomがある。サウンドトラックについてはサークルのYouTubeチャンネルで全曲公開されている。

4面「結氷が産みし洞窟」で流れるのがこの曲である。くだんのボス分岐があるステージであり、曲にはメインテーマのメロディーが含まれることから、実質的に本作の最大の山場と言える。初めは静かに拍と鈴を鳴らし、9秒頃から遅れてピアノやシンセが低めの音域で聴こえ出す。25秒からようやく主旋律が加わり、一度フレーズを奏でた後40秒過ぎにはドラムと合わせて勢いづいて盛り上がっていく。56秒から挟まれるピアノのリフレインは初代のタイトル曲『現で无い里へ ~ chain link?』でもおなじみのメロディーで、シンプルながらもここが正念場なのだと直感せしめる力強さを感じさせる。交互に繰り返すなかで2分14秒からは一際華やかで曲全体を覆い尽くすような派手やかな音色を奏でる。2分49秒あたりでは入れ替わるようにオルガンが主役を担い、3分以降にはピアノの伴奏が目立つようになるが、やがて3分17秒から収束していく。絡み合う思惑、混ざり合う足跡、覗く角度によって見える景色が変わる氷のように様々な物語性が込められた一曲である。

とてもしっくりくる曲名ですね。『現で无い里へ ~ chain link?』もあわせてどうぞ。

www.youtube.com