VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1347 『まっしろしろやま』(笠井勲・佐藤智彦/スノボキッズ/N64)

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ラクジンがおくるアクションスポーツレースゲーム・スノボキッズより、

笠井勲・佐藤智彦作曲、『まっしろしろやま』。同名のコースで流れます。

スノーボードを題材とするスノボキッズシリーズの第1弾にあたる本作。ロッキー山脈の山奥にある小学校に通うスノボ大好き少年・スラッシュは、級友と実力を競うべくレース大会・マルティーニ杯に出場することになる。バックストーリーは設けられているが、対戦メインで作中では物語の仔細は語られない。性能の異なる5人+隠し1人のキャラから選び、最大4人まで対戦可能なバトルレース、一人用で3種の技術を鍛えるスキルレース、同じく一人用のタイムアタックに挑戦できる。使用するボードは主にアルペン(スピード重視)、オールラウンド、フリースタイル(トリック重視)があり、それぞれ滑り心地に差がある。実際のレースにおいてはスノボならではの慣性の利いた操作感が特徴で、ただ速く滑るだけでなく、スティックやボタンを用いたコマンドでトリックを決める要素も含まれる。トリックを決めたり道中でコインを拾ったりするとお金が貯まり、コース上のショップに接触すればお金を消費してショット弾やアイテムを購入できる。これを使ってライバルを攻撃したり妨害したりする乱戦の駆け引きが存在するため、純粋なスポーツというよりパーティー色の強いレースゲームと言える。程よく滑り応えがあって競争心を煽る仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは笠井勲氏と佐藤智彦氏。スタッフロール上の役職名は両名ともサウンドプロデューサーである。いずれもラクジンに所属する作曲家で、スノボキッズシリーズには本作をはじめ続編にも携わっている。本作では滑走する心地良さを真っすぐ表現したポップでメロディアスで時折センチメンタルな楽曲群が揃っている。コースはオーソドックスな雪山はもちろん、草原、夜のハイウェイ、流砂など、多彩なロケーションが用意されているため、それにあわせて楽曲も軽快なバンドサウンドを中心としつつ景色に見合った味付けがなされている。サウンドトラックについては、ゲーム発売から25年後になってPS版プラスや続編の超スノボキッズとともに3枚組で収録されたものが登場した。

まっしろしろやまで流れるのがこの曲である。終盤に解禁されるコースで、猛吹雪による見通しの悪さと、くねくねと蛇行するような隘路を特徴とする。この後にも解禁されるコースはあるが、景色や状況、流れる曲の雰囲気を鑑みると実質的なラストステージのような印象がある。シンセとピアノを組み合わせたアップテンポなイントロで始まり、早鐘を打つような切迫感のあるフレーズを反復していく。10秒でギターが吼えると、それを皮切りに13秒からいっそう曲全体の迫力に磨きがかかり、オーケストラヒットなどの象徴的な音色を駆使して勢いを蓄える。メインメロディーが入るのは26秒からで、爽やかで親しみやすい旋律の裏で、33秒からキラキラと音程を小刻みに上下する音色を加えたり、52秒からすこし流れを変えてピアノとコーラスを強調したりしてメリハリ豊かに疾駆する。とりわけ1分18秒からピアノが華やかな分散和音を奏でる様子は非常に心地良く、こうした見せ場は2分24秒以降、そして曲終盤の2分50秒以降にも配置されている。メロディーが似ているため、一見1分45秒時点ですでにループに入ったかのようにも思えるが、聴き進めるとまだ見ぬ続きがあって長く楽しませてくれる。難路に気を引き締めつつも鮮やかに滑走する感覚がよく伝わってくる一曲である。

見通しが悪いと景色が似通って見えるけど実は違う、というコンセプトが曲構成に反映されている感じがしますね。