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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1438 『ロゼッタプラネット』(照井理美・永田権太/マリオカート7/3DS)

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任天堂がおくるアクションレースゲーム・マリオカートより、

照井理美・永田権太作曲、7の『ロゼッタプラネット』(仮称)。

同名のコースで流れます。

マリオと仲間たちがギミック豊かなコースを駆け抜けるマリオカートシリーズのうち、家庭用機向けの7作目でありシリーズ初のナンバリングを冠した作品として登場した本作。今度のマリオたちは陸のみならず海を潜ったり空を飛んだりしながら競い合うことになる。水中ではスクリュープロペラを、空中ではグライダーを使用して、陸と走るときとは異なる景色と慣性のもとでレースを繰り広げられるようになった。これに合わせてカートの機能が拡張され、コースとの相性や好みに応じてフレーム・タイヤ・グライダーの3種を組み合わせるカスタマイズ要素が導入された。また、3DS立体視に対応していて、より臨場感を追求したい場合はドライバー視点にしてジャイロ操作で遊ぶこともできる。対戦面ではローカルやダウンロードプレイはもちろん、最大8人まで世界中のプレイヤーと遊べるインターネット対戦も充実していて、ルールや条件を決めてコミュニティを結成する要素も存在する。総じて目新しさと遊びやすさを兼ね備えた仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは照井理美氏と永田権太氏。いずれも任天堂所属の作曲家で、永田氏はマリオカートシリーズには64から携わっている一方で、照井氏はシリーズ初参戦である。本作は照井氏にとって数少ない担当作品で、本作のほかには同じく2011年発売のスターフォックス64 3Dでの作曲経験があるが、この2作以外の作曲担当作品は現在に至るまで存在しないようである。本作ではレースの領域が広がったことを受け、水中や空中で楽曲の響きが変わる仕掛けが搭載されている。1位になるとパーカッションなどが目立つようになって力強く盛り上がったり、ファイナルラップでは恒例のアップテンポなアレンジが施されたりする。加えて本作では過去作のコースが復刻されているため、既存曲のアレンジも多く用意されている。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

ロゼッタプラネットの通常ラップで流れるのがこの曲である。夜空と氷に覆われた幻想的なコースで、景色は美しいが道中は非常に滑りやすく落下のリスクが付き纏う。本作のオリジナルコースのなかでは唯一、空を飛ぶ要素が含まれないが、水中を走るルートは存在する。そうしたなか、ピアノとシンセパッドによる包容力あふれるイントロで開始早々から神秘に浸らせてくれる。楽器のチョイスや全体的な雰囲気はニューエイジを彷彿させるが、テンポよくパーカッションを刻みながらピアノの重低音をふんだんに用いることで、癒し系の音楽とは一味異なる、ドラムンベース寄りの引き締まった印象を与える。ピアノはしばらく低音域を中心に存在感を示すが、30秒頃からシンセストリングスを伴いながら主旋律を担うようになると、今度は中~高音域で爽快な音色を紡ぐ。43秒からは低音が復活しつつ、主旋律でも引き続きクリーンなトーンを奏でる。また、ピアノと一口に言っても随所でエレクトリックピアノが用いられている点が印象深い。曲序盤(3~29秒の間)では主旋律を務めるが、それ以降はほとんど伴奏に融け込んでいる。伴奏を担うなかでも、34~36秒で洒落た音色を披露したり、ループ直前の54~59秒で独特なフレーズを奏でたりするなど、見せ場は充実している。穏やかで涼やかで艶やかな一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。8DXのDLCでもこのコースが収録されていて、シンセやドラムが強調されたり鐘のような音色が加わったりしてよりヴィヴィッドなアレンジに仕上がってます。ファイナルラップのアレンジと8DXのアレンジ、あわせてどうぞ。

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