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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1491 『ドラゴンに乗って』(水田直志/光の4戦士 −ファイナルファンタジー外伝−/NDS)

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スクエニがおくるRPG光の4戦士より、

水田直志作曲、鈴木光人編曲、『ドラゴンに乗って』。

ドラゴンに乗っている際に流れます。

ファイナルファンタジーシリーズのうち、スピンオフとして古き良き時代への回帰を謳った本作。クリスタルの意思が宿る世界を舞台に、大人となる節目の誕生日を迎えて王城を訪れた少年・ブランドは、北の魔女にさらわれたという姫を助けるべく旅立つうち、仲間と出会いクリスタルの啓示を受けて世界を救う大冒険を繰り広げることになる。ローポリゴンの質素だが表現力豊かなグラフィックと、ファンタジーの王道を突き詰めた世界観が印象的なRPGである。物語の流れのなかで冒険を共にする少年少女の衝突や成長を描きつつも、全体的に台詞や演出まわりは簡素で、レトロ風味の淡泊さがある。また、仲間の加入や離脱が頻繁に発生する都合上、4戦士揃っての冒険譚というよりは様々な事情が入り混じる群像劇のような雰囲気が強い。FFでおなじみのジョブシステムは本作ではクラウンと呼ばれ、全27種ある職業に応じた頭具を装着することで専用の見た目や性能を得ることができる。王道さを謳うなかでも本作の戦闘システムはやや変則的で、ターン制コマンドバトルだがMPではなくAP制である点や、攻撃や回復などのターゲット指定が自動(手動選択不可)である点が特徴的である。総じてクラシカルでありながらすこし癖のある仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは水田直志氏。編曲のみで鈴木光人氏も携わっている。いずれもスクエニに所属する作曲家である。FFシリーズでは水田氏は11(オンライン)で長期間にわたり多くの楽曲を書き下ろし続けているほか、鈴木氏は本作以前に同じく外伝枠のDISSIDIAで編曲を担当している。本作ではレトロを意識しつつレトロ過ぎない塩梅で、基本的にDSが出せる水準の音色を用いながら、ところどころアクセントを添えるようにファミコン風味のチップチューンを取り入れている。また、本作は昼夜の概念が存在するため、昼と夜でアレンジが変わる仕組みも搭載されている。サウンドトラックはゲーム発売後まもなく登場した。

ドラゴンに乗っている際に流れるのがこの曲である。物語終盤になるとワールドマップを移動する手段としてドラゴンを呼んで空を飛べるようになる。FFで頻出する飛空艇ではなく、ドラクエの神鳥や天馬に代表されるような空飛ぶ生き物に類するものなので、この曲は歴代の飛空艇BGMにみられるスピーディーでシンフォニックな曲調ではなく、後者に寄せて吹奏楽器主体のしっとり淑やかな曲調に仕上げられている。初めはエレクトリックピアノと笛による穏和で静謐なアンサンブルが奏でられ、夢見心地でまどろむような柔らかな哀愁を漂わせる。21秒から管楽器の伴奏が入って徐々に音色に厚みが加わると、43秒で流れが変わって朗らかな響きを纏うようになる。1分3~14秒で管弦楽器がゆったりと演奏した後、今度は小刻みに音色を鳴らして笛の主旋律を活き活きと引き立てる。笛やラッパ、ストリングス、鉄琴を巧みに組み合わせて精いっぱい盛り上げることで、当初の哀愁漂う雰囲気からは一転して前向きで楽天的な印象を与える。その後も雄大な演奏が続くが、2分11秒を境にぴたりと止んでループに入る。ループ後は同じように哀愁が漂うなかでも、一連の流れを経たおかげで心なしか前よりも希望に満ちているかのように聴こえる。叙情的な趣のある素敵な一曲である。

前半で癒されて後半で活力が湧いてくるような感じが良いですね。