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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1628 『BAMBOO FOREST』(岩田匡治/疾風魔法大作戦/AC)

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ライジングがおくるシューティング・魔法大作戦より、

岩田匡治作曲、疾風の『BAMBOO FOREST』。4-Aと4-Bで流れます。

ファンタジースチームパンクのハイブリッドな作風で知られる魔法大作戦の2作目にあたる本作。前作のゴブリガン大戦から1年後、戦勝記念に大陸横断大エアロレースが開催されるなか、勝者の望みをなんでも叶えるという王の言葉を聞きつけた各地の猛者が競い合うことになる。分岐ありの全6面・計12エリア構成の縦スクロールシューティング兼レースゲームで、自機以外にも複数のライバル機と並走してゴール一番乗りを目指す。プレイアブルキャラは8人、前作の顔ぶれに加えて妖精や生きた鎧やゴブリンの大尉など濃い新キャラが多く、性能差の他にキャラ別・順位ごとのエンディングが豊富に用意されている。速さを競う性質上、スクロール速度は可変で画面の上にいれば加速、下に張り付けば減速し、ショットボタン押しっぱなしで攻撃できなくなる代わりに超加速できる。道中ではシューティングのゲーム性に加えて、ライバル機めがけて攻撃したり体当たりしたりして妨害し合うレース特有の駆け引きが存在する。ライバル機も含めた当たり判定の煩わしさや、自機が戦っている最中にライバル機が戦闘を回避して追い抜いていく歯がゆさがあり、シューティングに注力すると高順位が狙いにくく、レースに注力するとシューティングが疎かになりかねない。ややアンバランスだが意欲的な仕上がりとなっている。後にセガサターンに移植された。

本作の音楽を担当するのは岩田匡治氏と崎元仁氏。いずれも当時フリーランスだった作曲家で、本作を皮切りに蒼穹紅蓮隊ブラッディロアなどライジング製の作品群に頻繁に携わることになる。魔法大作戦シリーズに関しては前作は本山淳弘氏が単独で担当していて、次作のグレートでも本山氏が参加しているが、本作のみ作曲体制が異なる。本作ではレースらしいファンファーレやプログレ的な勢いのあるメタリックなサウンドと、シューティングのノリを捉えたスピーディーでアグレッシブなサウンドが融合していて、特にボス戦は破壊的な曲調が目立つ。サウンドトラックについては魔法大作戦シリーズの楽曲を網羅したもののなかに本作の楽曲が含まれる。

4-A「DEEPLY DUNGEON」と4-B「COLD CORRIDOR」で流れるのがこの曲である。4-Aは前作の3面でおなじみのスライム蔓延る薄暗いダンジョンで、本作では水没した状態で再登場する。4-Bは本作オリジナルの氷のダンジョンである。いずれも水流や吹雪などで急加速して壁に衝突する危険がある。そうしたなか、イントロから大仰かつ神秘的な音色を鳴らしてダイナミックであると同時にプリミティブな印象を与える。13~19秒であえて伴奏のみで魅せるストイックなパートを挟んだあと、20秒から笛の旋律が入ることでじわじわと盛り上げる。とりわけ46秒からの高速で変幻自在なフレーズは耳に残りやすく、素早く疾駆しながら隘路を掻き分けて進む感覚がよく表現されている。やがて再び伴奏で魅せるパートを挟み、次のループへと繋がっていく。曲を通してドラムの打音が激しく淀みなく刻まれる点が象徴的で、全体の勢いを力強く支えている。幻想的な響きと厳格なリズム感がぴったり嵌まった一曲である。

曲名曰く竹林ですが、ステージは竹林ではないですね。たしかに竹林に似合いそうな曲ではあります。