VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1330 『A・NI・KI』(岩崎琢/愛・超兄貴/PCECD)

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メサイヤがおくるシューティング・超兄貴より、

岩崎琢作曲、愛の『A・NI・KI』。ステージ2のエリア1と3で流れます。

個性が炸裂する筋肉派シューティング・超兄貴シリーズの2作目にあたる本作。前作の戦いから2年後を舞台に、再び不穏な動きをみせるビルダー星系に行ったきり消息が途絶えた男性神・イダテンを探すべく、舎弟のアドンとサムソンが現地へ向かうことになる。全4面・各3エリア構成で、広い意味では前作と同じく横スクロールシューティングだが、ポージングゲームという謳い文句に違わず本作独自の新システムを採用している。弾を撃つのではなく、格闘ゲーム風のコマンドを入力して各種ポーズを決めることで、汗を飛ばして肉体美を魅せつけて敵を悩殺していく仕組みである。一般的な残機制の代わりに時間制限を絡めた要素を取り入れていて、3回ミスするか一定時間経過するたびに画面左上の砂時計が減る(砂時計はアイテムやスコアに応じて補充される)。筋肉と漢気で塗り固めた世界観や、メンズビームをはじめとする技名のセンスは健在で、本作では一段と雄々しく活きの良い筋肉の質感や動きのキレを堪能できる。元々忙しいシューティングのゲーム性にコマンド入力がかち合うため、操作の煩雑さが目立つつくりとなっているが、前作に引けを取らず異色感満点な意欲作に仕上がっている。

本作の音楽を担当するのは岩崎琢氏。主にアニメの劇伴方面で活動する作曲家で、90年代当時は一時期KLONというゲーム会社に在籍していたようである。超兄貴シリーズといえば前作を担当した葉山宏治氏がサウンドの中心人物として知られるが、本作では初参加となる岩崎氏が単独で手がけている。氏は次作・次々作でも引き続き携わることになる。前作で築き上げられた強烈な音楽性を受け継いで、本作でもけばけばしい楽曲が揃っている。ハイテンションな曲調にさらにハイテンションなスキャットを加えたり、ものによっては神聖な響きを帯びていたり、オペラやディスコのような雰囲気だったり、洋楽のオマージュだったりするなど、絵面の濃さに見合った濃密な楽曲群を楽しむことができる。サウンドトラックは発売されているものの、一部楽曲は未収録である。

ステージ2のエリア1と3で流れるのがこの曲である。エリア1は森林、2は花畑、3は再び森林に戻る構成のため、いうなればこの曲は森林のBGMである。手前と奥で多重スクロールする背景には何とも言えない表情を浮かべた人面樹が並んでいて、道中ではマッチョな蝶々やマンドラゴラのようなものが出没する。そうしたシーンを彩るにあたって、冒頭からやたら荘厳で幻想的なクワイアが響くことで、大自然の面妖さと、そのなかを浮遊して華麗にポーズを決める自機の珍妙さをよく表現している。曲名が示す通り、クワイアの歌詞は一貫して "A・NI・KI" であり、神秘的なのに滑稽でもあるような奇異な空気感を醸している。8秒頃からメロウなビートが加わり、19秒あたりからクワイアが再合流すると、ニューエイジ風の兄貴への賛美歌というシュールな組み合わせながらもとても落ち着く親和性抜群な雰囲気を形作る。とりわけ1分からクワイアが一旦抜けてちょっぴりオリエンタルなフレーズを奏でるパートは非常に心地良い。ムキムキの筋肉を披露しながら森林浴する状況になぜかぴったりな一曲である。

聖歌×ニューエイジ×ワールドミュージックというとEnigmaが下地にあって、それを兄貴で上染めした感じでしょうか。間に挟まれたエリア2で流れるのは『チベット~解脱~』で、そちらもなかなか味わい深いです。あわせてどうぞ。

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