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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1346 『スイーツファクトリー』(橘田拓人・小谷野謙一・吉田シゲロウ/ポケパーク2 ~Beyond the World~/Wii)

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クリーチャーズがおくるアクションアドベンチャーポケパークより、

橘田拓人・小谷野謙一・吉田シゲロウ作曲、2の『スイーツファクトリー』(仮称)。

スイーツファクトリーで流れます。

ポケモンシリーズのスピンオフであるWii用アクションアドベンチャーポケパークの続編にあたる本作。たくさんのポケモンたちが暮らすポケパークにやってきた主人公のピカチュウは、話題の遊び場・ウィッシュパークに向かうも、みんなの様子がおかしいことに気付き、異変の元凶に立ち向かうことになる。箱庭風の世界でピカチュウを操作していろんなポケモンと交流したりミニゲームに挑戦したりする点は前作同様である。本作では当時最新のブラック・ホワイトから新ポケモンが参戦していて、活き活きとした仕草からちょっとしたドラマ、写真撮影まで、ポケモンだけの世界ならではの愉快な雰囲気を堪能できる。加えて本作ではウィッシュパークという新たな冒険の舞台が用意されていて、前作以上にメリハリのある物語を楽しむことができる。ウィッシュパークは複数のエリアから成り、エリアごとに専用のアトラクションが設けられている。アトラクションの内容はシューティングやリズムゲームなど様々で、物語上ではミニゲームより規模の大きいイベントボス戦のような立ち位置にあるほか、一度クリアすると最大4人まで同時に遊べるようになる。前作から順当に目新しさが加わって遊びの幅が広まった仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは橘田拓人氏、小谷野謙一氏、吉田シゲロウ氏。橘田氏はクリーチャーズに所属する作曲家で、小谷野氏と吉田氏(SIGERO名義でも知られる)はフリーランスである。このうち小谷野氏と吉田氏は前作に引き続き作曲に携わっているほか、橘田氏は前作ではサウンドディレクション欄にクレジットされていたが、本作ではミュージック欄にクレジットされている(本作のサウンドディレクターはクリーチャーズ伊藤歩氏)。前作と同じく明るく楽しくバラエティ豊かなサウンドが揃っているなかでも、本作では特にウィッシュパークが怪しげな印象を纏っていることから、不穏な感触やミステリアスな響きが目立つようになった。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

スイーツファクトリーで流れるのがこの曲である。ウィッシュパークの最初のエリアであるスイートゾーンのアトラクションで、Wiiリモコン縦持ちでケーキの材料を狙い撃つ、いわばシューティングゲームである。エレクトリックピアノが柔らかい音色を奏でる傍ら、景気づけにリズミカルなハンドクラップを添えることで、チャーミングでキュートなエレクトロポップ風の曲調を形作る。9秒や13秒など随所で短くキュッと鳴る音(例えるならば、お風呂に浮かべるおもちゃのアヒルを押すと発する音)を取り入れていて、それがますます童心をくすぐるような聴き心地を生み出している。35~36秒で束の間だけキラキラとSFチックな音色が駆け下ったり、41~48秒でおどけつつもスタイリッシュな間奏を披露したりすることで、全体として甘々な空気感が漂うなかでもシューティングっぽいクールな印象が挟み込まれている。可愛くて煌びやかで癖になる一曲である。

ジャンル確立前のKawaii Future Bassと言えるかも? 心地良いですね。