VGM格納庫

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#1740 『日輪丸』(田崎寿子/ペルソナ2 罰/PS)

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アトラスがおくるRPG・ペルソナより、

田崎寿子作曲、2罰の『日輪丸』。同名のダンジョンで流れます。

女神転生の派生作品であるペルソナシリーズの初期のナンバリングのうち、罪の直接の続編として登場した本作。噂が現実になってしまう珠閒瑠市を舞台に、雑誌記者の女性・天野舞耶は、邪魔な人間を殺してくれるという怪人JOKERと連続猟奇殺人事件の謎を追ううちに、妙に既視感のある少年と出会って数奇な因果に翻弄されることになる。キャラや世界観、ゲーム性などを多く受け継いでいるが、学生が主人公だった前作や他のシリーズ作品と比べて本作は大人目線でのハードでビターな物語が描かれている点が特徴である。同じキャラでも物語の構造と連動して役回りや立ち位置が変わっていて、大人陣の渋さや不器用さと相まって魅力的なヒューマンドラマを楽しむことができる。システム面でも概ね前作同様だが、人間の加入メンバーや悪魔との交渉の流れなどの分岐が多様化し、戦闘演出の簡略化オプションや合体魔法の仕様変更など細かな調整が施されている。総じて前作とは異なる切り口で物語を補完しつつ新たな味わいを生んだ仕上がりとなっている。後にPSP向けにリメイクされた。

本作の音楽を担当するのは黒川真毅氏、田崎寿子氏、土屋憲一氏、目黒将司氏。現在も所属している土屋氏を除き、いずれも当時アトラスに所属していた作曲家である。このうち目黒氏以外は前作から続投していて、田崎氏は本作のリードコンポーザーを務めている。PSP版では喜多條敦志氏と小西利樹氏が編曲している。本作は前作と同じ舞台のパラレルなストーリーだが、音楽は使い回しに頼り切らず書き下ろしの新曲が多く用意されている。ジュブナイルからマチュアな雰囲気に転換したことを印象付けるように、落ち着きとスリルが釣り合ったハイセンスな楽曲群が揃っている。サウンドトラックについてはオリジナル盤のほか、PSPリメイク音源と合わせて網羅したものが存在する。各楽曲の作曲担当者はサントラ上の記載はないが、NexToneのデータベースに情報が登録されている。

日輪丸で流れるのがこの曲である。日輪丸は表向きはクルーズ船だが、2FからB3Fまで5階層もある広々としたつくりで大がかりな改造が施されていて、敵も出現する立派なダンジョンである。清涼感のあるシンセに、まるで心電図のビープ音のように周期的に鳴り響く高音、そして鮮やかに散りばめられるピアノの組み合わせが象徴的である。涼やかで心地良いトランス系のナンバーだが、ただ心地良いだけではない冷徹さが宿っている。30秒手前からシンセパッドが次第に薄れる代わりにパーカッションがフィーチャーされるようになり、ソリッドでドライな印象がぐっと強まる。粘り強く繰り返すなかで、59秒あたりからさらりとピアノを添えることで、適度にテンションを整えてくれる。最後まで似た調子が続くが、ピアノが抜けたあとの1分26秒からのフレーズは単純な反復ではなく、新たな音色を交えて聴き飽きない響きを生んでいる。夜風のように爽やかだが秘密めいた空気感が漂う一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。PSPのアレンジは小西さんによるもので、ディスコチックというかサイバーっぽいというか、原曲とは違った昂揚感のある感じが素敵ですね。あわせてどうぞ。

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