知久光康作曲、『エンディング』(仮称)。エンディングで流れます。
オウガバトルシリーズで知られるクエストの初期の作品にあたる本作。暗黒の覇者・灰冥王により天上界が滅ぼされ、人間界にまで危機が迫るなか、天上界の生き残りの王子・天童は、老犬にして神犬のドドンパの導きで灰冥王を打倒すべく旅立つことになる。全5面構成の横スクロールアクションで、世界観やキャラデザイン、ステージ背景、演出などが中華風に統一されている点が特徴である。横スクロールでも縦の広がりや迷路のような入り組み具合、溶岩や雷などのギミックが充実していてステージごとに特色が出ている。操作は剣による通常攻撃、ジャンプ、神犬の召喚のほか、ショップで対応するアイテムを入手することで火の玉が発射できたり、神犬の必殺技・ドドンパ砲を使えるようになったりする。特筆すべきはショップ店員の少女・鈴風(りんぷー)の存在感で、キャライラストは頭身高めで美麗に描き込まれている。各アイテムを解説してくれたりアナウンサーになり切ってニュース(面攻略に役立つ情報)を届けてくれたりと、非常に豊かな言動と反応を楽しむことができる。総じて小粒だか密度濃くアクションの手堅さとビジュアルの魅力を両立した仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは知久光康氏。ロックバンド・J-WALK(現THE JAYWALK)のギタリストで、ゲーム音楽方面では本作以前にショウエイシステム製の北斗の拳シリーズに携わったことがある。本作の中華冒険活劇を彩るにあたって、楽曲も雰囲気に合わせて軽くオリエンタルなテイストを取り入れている。前半ステージ群は愉快な勢いのあるもの、後半にかけてはおどろおどろしさやそれに立ち向かう使命感が目立つものが多く、場面ごとにメリハリをつけている。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。
エンディングで流れるのがこの曲である。本作のエンディングは、黒背景にスタッフロールが流れ、最後に主人公の一枚絵が映るだけという簡潔なつくりで、エピローグ等もなく直後にゲーム2周目に突入する。非常にあっさりしているが、曲のおかげでむしろその潔さが胸に染みる。切なくも伸び伸びとした旋律に、しっかり歯切れ良くリズムが刻まれることで、しみじみと感慨に耽りつつ前向きな気分でいられるような雰囲気を生み出す。9~10秒で一瞬だけ高速な32分音符を入れたり、12~14秒で徐々に上昇する音階を奏でたり、逆に16~17秒で一気に駆け下ったりすることで、曲全体に細やかな工夫を凝らしている。締めの24秒あたりにはドラムを強めに連発してから上昇音階を添えて、爽快な印象を保ちながら手短に仕切り直している。だがこれで1ループが終了するわけではなく、34秒から新たなメロディーが紡がれ、51秒以降にもまた低音域が映える独自のパートが設けられる。やがて1分8秒から収束していき、最後にはきっちり区切りをつけて有終の美を飾る。山あり谷ありの冒険の軌跡を辿るように抑揚に満ちた一曲である。
好い曲、好ましい曲ですね。ショップの曲も天真爛漫な感じが出ていて素敵ですので、あわせてどうぞ。