VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1268 『ボス戦』(水谷郁/しっぽでブン!/GB)

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ナツメがおくるアクション・しっぽでブン!より、

水谷郁作曲、『ボス戦』(仮称)。ボス戦で流れます。

ナツメ製の初期の作品である本作。平和なはずの動物王国・モベリーランドに竜将軍率いる軍隊が攻め込んできたことを受け、ワニの勇者のモベリー・チャーリーが自慢のしっぽで追い払うことになる。ステージクリア型のアクションゲームで、全4エリア構成(エリア3のみ地上と雲上で分かれているため、実質5つ)で各エリアは複数のステージから成る。同一エリア内のステージはボス面含め基本的に順不同で攻略可能である。道中の敵をしっぽでブンブン薙ぎ倒す傍ら、ステージ内に点在する宝箱をすべて開錠して鍵を入手することで次の面に進めるようになる。近付いて攻撃する以外にも、パワーアップアイテムを集めるとしっぽから斬撃波のようなものを飛ばして遠距離貫通攻撃を放つことができる。メルヘンチックな世界観を反映してか、全体的な動作はふんわりしているが、操作のレスポンスが良好で動かしやすい点が魅力である。総じてさっくりカジュアルに遊べる仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは水谷郁氏。スタッフロールではI.MIZUTANIと表記されていて、作曲に加えてサウンドスーパーバイザーを務めている。当時ナツメに所属していた作曲家で、後のメダロットシリーズなどに携わることになる。本作ではゲームボーイ音源の素朴な魅力を引き出したハッピーでスウィンギングなジャズやラグタイム系統の楽曲が揃っている。休符や拍の置き方、パーカッションの鳴らし方を工夫することで、音数のすくなさを感じさせない表現力豊かなサウンドを実現している。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

ボス戦(ラスボス戦含む)で流れるのがこの曲である。待ち受ける敵はカエルだったりラッコだったりして、動物のチョイスや見た目の可愛らしさゆえにあまり手強い雰囲気は漂っていないが、この曲はそうしたイメージを良い意味で覆してくれる。他の曲はジャズはジャズでも底抜けに明るい曲調が多いが、この曲は一転して大人びた艶のあるシックでスマートなナンバーに仕上がっている。イントロから心惹かれる小粋なリズム感のある音色を奏で、主旋律の裏で低音をうまく添えることで聴き応えのある濃密な印象を与える。8~9秒や12~14秒などでみられるように、低い音から徐々に音階を上がっていくフレーズを交えることがあり、それによってノリやすく昂揚感をそそるような響きを生み出している。一方で、16秒からループ終わりにかけては高音域から下がることで収束していき、きっかり20秒で1ループとなる。短いながらも上り下りの緩急に富んだダイナミックな一曲である。

なんて格好良いんでしょう。すごく魅了されます。