セガがおくるアクション・クロックワークナイトより、
村崎弘史作曲、下巻の『バスルーム』(仮称)。3-2面で流れます。
セガサターン初期の看板タイトルとして登場したクロックワークナイトの後編にあたる本作。おもちゃたちが暮らす世界を舞台に、ゼンマイ仕掛けの騎士・トンガラは、一度さらわれたオルゴール人形のアイドル・チェルシーを救い出すもまた奪われてしまったことを受け、再び冒険に出ることになる。2D横スクロールのゲーム性に3Dポリゴンを取り入れたアクションで、下巻の名に違わず前作(上巻)のエンディングから直接繋がる内容である。上巻と同じく4ステージ×各2エリア+ボス戦&ラスボス戦から成る全13面構成で、難易度の上昇や攻略自由度の向上、収集要素の追加により、前作以上のボリュームと遊び応えがある。ステージ設計やギミックに関しても充実していて、強制スクロールステージや、3Dならではの奥行きを使ったライン移動、各ステージに巧みに散りばめられたトランプ集めなど、視覚的な面白さとアクションの手触りがバランスよく取られている。往年の作品らしく一筋縄ではいかない手ごわさがあるが、上巻と合わせて堅実にまとめられた仕上がりとなっている。後に二作をセットにして追加要素を加えた完全版が登場した。
本作の音楽を担当するのは村崎弘史氏。当時セガに所属していた作曲家で、上巻に引き続き下巻も主題歌含めて単独で作曲している。人形劇風のファンシーでメルヘンチックな世界観に沿うように、本作ではアコースティック系の剽軽なサウンドを中心に取り揃えられている。ラッパやバンジョー、ピアノなどをふんだんに取り入れて、ジャズやカントリー、ブルーグラスなどの明るく楽しく心躍る雰囲気を生み出している。サウンドトラックは一部楽曲を収録したものが存在するが、未収録曲に関しては正式な曲名が判明しておらず、ここでは便宜上の仮称とする。
3-2面で流れるのがこの曲である。本作の特色とも言える、ロバに乗って進む強制スクロールステージである。背景はいたって平和そうなバスルームだが、手前と奥のレールを行き来したり、下からサメが襲いかかったりアスレチック感のある構成が特徴である。そうしたなか、出だしからバンジョーとハーモニカを迫力満点に鳴らして愉快な気分にさせてくれる。7秒からメインメロディーが始まると、なんとも軽快で能天気で愛嬌あふれる印象を与える。全体的に底抜けに明るいなかでも、22秒からのフレーズには渋く素敵な響きがあり、36秒過ぎから非常に長く引き伸ばした音色を奏でるくだりには独特な味わいがある。さらに特筆すべきは51~58秒の畳みかけるような音階で、しばらく進んで1分20~26秒や1分44~49秒のハーモニカのフレーズにも似たような勢いが感じられる。1分55秒でピークを迎えると入れ替わるように低音パートが聴こえ出し、曲後半になっても新パートが盛りだくさんで新鮮な驚きをもたらす。やがて2分40秒でキリよく締め括ると、すぐまた冒頭から繰り返すことになる。いつまでも楽しい一曲である。
バスルームで乗馬してパカパカ走ってポコポコ泡立つ感じがすごくよく音で表現されていて感心しています。