島村陽一・中島広太作曲、3の『Arrow』。2面のボス戦で流れます。
式神使いの活躍を描く縦スクロールシューティング・式神の城シリーズの3作目にあたる本作。式神を操る少年探偵・玖珂光太郎ら日本の式神使いたちは、厄介な経緯で中東欧の小国・アルカランドで発生した連続失踪昏睡事件の調査協力をすることになり、謎めく戦いに身を投じることになる。全5面構成、自機は既存4人+新規6人による10キャラがプレイアブルである。システムや操作体系など大部分は前作から踏襲していて、相変わらずキャラ性の濃さを重視した作風であるなかでも、特にコミカルな色合いが強まっている。本作の新要素としてショット・ボム同時押しで発動できるハイテンションMAXというものがあり、従来のテンションボーナス(敵や敵弾に近付くほどスコア倍率が高まる要素で、1~8倍まで変動する)を任意のタイミングで短期間のみ強制8倍状態で引き起こすことができる。稼ぎ目的だけでなく、発動直後に無敵時間が存在することから緊急回避に使うこともできるため、本作独自の戦略要素として一定の存在感を放っている。総じて前作までの雰囲気を継承しつつさらにノリが強まった仕上がりとなっている。後にPC、Wii、Xbox 360に移植された。
本作の音楽を担当するのは島村陽一氏と中島広太氏。いずれもアルファ・システム所属の作曲家である。このうち島村氏は式神の城シリーズには初代から連綿と携わっていて、中島氏は本作がシリーズ初参戦である。清涼感のあるスタイリッシュでメロディアスなトランス系のサウンドは本作でも健在で、ハードなものからオリエンタルなもの、しっとりとした気品のあるものまで、どれも上質な水準でまとめられている。サウンドトラックには未使用のボーナストラックも含めて収録されている。
2面のボス戦で流れるのがこの曲である。対峙する相手は鴉天狗の壬生谷志功で、壬生谷は護国の巫女を育て上げる一族として知られる。育てると言っても自我を持たぬ使い捨ての駒に仕立て上げ、必要とあらば巫女を処分するほどである。そうしたラディカルでストイックな設定に合わせて、この曲は怪しくも洗練されたドラムンベースに仕上がっている。龍笛を思わせる甲高い和楽器の音色から始まり、瞬時に雰囲気をがらりと変えて強い疾走感と畏怖を感じさせる。24秒からはお経が加わって異様なノリとリズムとムードを生み、35秒で笛やシンセが合流すると驚くほどうまく音色同士がブレンドする。45~46秒でお経がリズミカルに区切って締め括ると、以降はループに入るため、全体の曲の尺は割と短い。しかし繰り返し聴くことでかえって耳にこびりつくような印象がある。奇特な一曲である。
なんだか笛が泣いているような、独特な寂寥感があるのが良いですね。