バンダイナムコがおくる君のためのRPG・テイルズオブザワールドより、
椎名豪作曲、3の『Vital garden』。エラン・ヴィタールで流れます。
テイルズシリーズのうち、シリーズキャラクターが作品の垣根を越えて共演するマイソロのナンバリング3作目にあたる本作。世界樹の力で繁栄する世界を舞台に、記憶喪失の主人公は、カノンノという少女の手引きで空を駆けるギルド・アドリビトムの一員に加わり、やがて訪れる世界の危機に立ち向かうことになる。歴代シリーズから総勢80人以上のキャラがクロスオーバーして織り成す壮大な物語が特徴で、主人公のキャラメイクの自由度が向上したほか、戦闘面では二丁拳銃を扱う新職業のガンマンが追加されたことを筆頭に、すべてのキャラに均等に秘奥義が実装されるなど、各要素が順当に強化されている。マイソロ3部作の集大成らしい充実ぶりを誇る仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは青山響氏、桜庭統氏、椎名豪氏、中島広太氏、中村和宏氏、安田拓也氏。青山氏、桜庭氏、中村氏はフリーランスの作曲家で、中島氏と安田氏は本作の開発元であるアルファ・システムに、椎名氏は当時バンダイナムコに所属していた作曲家である。本作ではクロスオーバー作品という特性上、過去作からの流用曲が大半を占めている一方で、少数ながらオリジナル曲もあり、特に戦闘曲まわりは桜庭氏が、イベント曲まわりは中村氏が手がけているようである。サウンドトラックは主題歌やキャラソンアレンジ、ミニドラマを中心に、リミックス形式でシリーズの一部楽曲を収録したコンピレーションアルバムが発売されている。
エラン・ヴィタール、世界樹の生命の中心であるラストダンジョンで流れるのがこの曲である。イントロから躍動感たっぷりに響くボーカルが印象的で、ストリングスやブラスなどが幾重にも重なって紡がれる壮麗なオーケストラと、それを上回る覇気を示す艶麗なコーラスとが美しく絡み合う。50秒あたりで一旦激しさが鳴りを潜め、官能的とすら思える甘美な歌声が辺りを支配すると、1分過ぎには一転、金管楽器の鋭い咆哮が轟き、続いて弦楽器も畳みかけるような勢いで重厚な音色を奏でる。エラン・ヴィタール(élan vital)とはフランス語で「生命の躍動」を意味する哲学用語で、この曲の題名もまた「命の園」を意味するお誂え向きなネーミングだが、そうした雄大な命名に違わぬ圧倒的な生命力が、あらゆる楽器と声楽の、一つ一つの音にまで染み込んだ一曲である。
音が生きているというか、音のなかに命が芽吹いているというか、そんな感じの印象を受けます。