阪東太郎作曲、『土管ステージ』(仮称)。土管ステージで流れます。
ふぁみこんむかし話シリーズで知られるパックスソフトニカが開発し、任天堂が発売した本作。家族と平和に暮らしていたモグラの主人公・モグラ~ニャは、不在の間に農夫のじんべえにさらわれてしまった妻子を助けるべく、敵地のじんべえランドに乗り込むことになる。全8面構成、各ステージは固定画面で複数のエリアに分かれていて、地上と地下を行き来しながら出口を目指す。ライフ制で道中には敵がいて障害物があってステージの最後にはボスが待ち受けるなど、全体的なつくりはアクションゲームに倣っている。そのうえ本作独自の捻りとして、任意の場所で穴を掘って地下に行けるし地上に戻れるモグラならではの動きと、黒いたまというキーアイテムを動かして道を切り拓いたり出口まで運んだりするパズル要素が備えられている。基本的に出口は壁で塞がれているため、壁を壊すのに用いる黒いたまを持っていく必要がある。黒いたまは押したり引いたり投げたりできて敵を攻撃するのにも使えるが、地上のみ運搬可能なので、移動が楽な地下ばかり掘り進むと後々苦労する破目になる。適度な難易度、脱力感のあるシュールなデザイン、通信ケーブルを介して2人対戦も可能なミニゲームの収録など、バランスよく各要素がまとまった仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは阪東太郎氏。任天堂に所属するサウンドクリエイターである。主に効果音制作やスーパーバイザーなどを手がけることが多いため、本作は氏にとって数少ない作曲担当作品である。本作ではコミカルで愛嬌のある雰囲気にあわせて、ゲームボーイ音源の魅力を引き出した軽快で溌溂とした楽曲が揃っている。一方で、ボス戦や不穏なシーンなどで流れる曲はしっかり焦燥感を誘うハードでシリアスな曲調に仕上がっていて、細かいジングルの充実ぶりと相まって場面ごとに丁寧に作り分けられている。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。
4面などの土管ステージで流れるのがこの曲である。4面は配管工のボスが待ち受けるステージで、道中は地下も含めて土管が多く設置されている。8分音符と16分音符2つによるノリノリなリズムパターンに、愉快で活発な響きを帯びた旋律を組み合わせることで、出だしからウキウキと心を弾ませてくれるような印象を生み出す。主旋律だけでも勢い十分だが、続けざまに後を追いかけるように副旋律が響くため、勢いが途切れることなくずっと新鮮な躍動感を漂わせ続けている。とりわけ25秒あたりからの伸びやかなフレーズは非常に快いし、38秒で一際低い音を鳴らした後に44秒で一際高い音で締め括るさまも印象深い。どんどん前へ進んでいく感覚がよく伝わってくる一曲である。
ぱっと気分が華やぐ感じの曲で、とても良いですね。