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#1424 『CHAPTER 06』(齋藤博人/クロスワイバー/PCE)

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FACEがおくる変身アクション・クロスワイバーより、

齋藤博人作曲、『CHAPTER 06』(仮称)。CHAPTER 06で流れます。

特撮ヒーローを題材にしたサイバークロスの続編にあたる本作。前作のDr.ノズミーとの戦いから数年後、地球を我が物にせんと企む異空間からの侵略者・ドーマに対抗すべく、銀河警察機構の特別捜査官・クロスワイバーが出動することになる。全13話(=13ステージ)から成る横スクロールアクションで、ステージによってはシューティング面も存在する。普段は生身の状態だが条件を満たすと変身することができる点は健在で、本作では変身先が充実し、ソード使いのレッドワイバー、ガン使いのブルーワイバー、ブーメラン使いのグリーンワイバー、それぞれ6段階まで武器がレベルアップするようになった。敵キャラやステージ背景を筆頭にグラフィックが強化されていて、前作の馴染みの敵がパワーアップして立ちはだかるといったお約束の展開が待ち受ける。前作同様、やや遅めの操作感や落下死による歯がゆさは残るが、特撮らしい雰囲気とアクションを楽しめる仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは齋藤博人氏。スタッフロールではDANDY HIROTO名義でクレジットされている。当時FACEに所属していた作曲家で、本作がデビュー作である。前作では神尾憲一氏が作曲していて、作中には特撮ソング風の主題歌のオフボーカル版が収録されていたが、本作ではそれがない代わりに曲数が豊富に取り揃えられている。全体的に本作の作風は前作よりも渋く堅めな色合いが増したことに伴って、サウンドの方向性も同様にシリアスな印象が強まった。目まぐるしく音階を行き来して疾走感と使命感を漂わせるような曲が多い。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

CHAPTER 06(第6話「謎の石柱を越えろ!」)で流れるのがこの曲である。紅く燃えるような夕焼け空を背に、突如出現した石柱群を飛び伝っていくステージで、狭い足場をジャンプして進む性質上、落下死のリスクが付き纏う。そうしたなか、深刻な響きを帯びたイントロで始まり、不穏な雰囲気を湛えながらじっくりフレーズを反復する。が、13秒から主旋律が入ると一気に勇ましく威勢の良い印象をもたらすようになる。16秒以降など中低音域で特徴的な副旋律を奏でたり、24~25秒や37~38秒で一際煌びやかな高音を鳴らしたりして、うまく緊張感と昂揚感を駆り立てている。39秒で流れが変わり、長めの音色を鳴らして念入りに勢いを蓄えていった後、52秒でもう一段階溜めるようなフレーズを奏でる。1分2~5秒でサビ直前のような盛り上がりをみせるが、程なくして聴き覚えのあるループに突入する。曲全体を通して非常に力強く牽引力があるが、まだクライマックスではない、そんな巧みな匙加減が窺える一曲である。

音から伝わってくる温度感が気持ち良いです。