Pigeon Gamesがおくる音楽ゲーム・Phigrosより、
kozato snow作曲、『桜樹街道』。「WAVEAT 精選集」の収録曲の一つ。
中国のインディー制作チーム・Pigeon Gamesの代表作にあたる本作。寒冷化により地球が氷に閉ざされ、ピクセルタワーと呼ばれる精神世界が存在する近未来を舞台に、第七小隊隊員の新人の少女・鳩は世界の成り行きを見届けることになる。課金要素のない完全無料の音楽ゲームで、リズムにあわせて判定ラインに向かって降ってくるノーツをタップしたりフリックしたりして攻略していく。最大の特徴は判定ラインが縦横無尽に動き回る点で、ただ上下左右に移動するのみならず、傾いたり回転したり増殖したり消滅したりする予測不能なギミックとして機能している。このようにラインが激しく荒ぶるが、ラインの垂直方向すべてに判定がつくため、意外とノーツを拾いやすく融通が利くつくりになっている。チャプター仕立てで断片的ながらも世界観に凝った独特な物語を味わえる点とも相まって、奇抜で味わい深い遊び心地を得られる意欲作に仕上がっている。
本作では中国や日本などアジア圏のアーティストを中心に、主にメロディアスでエモーショナルなエレトロニックサウンドが収録されている。アップデートを通じて盛んに楽曲が追加されていて、たとえば中国の電子音楽レーベル・Soul NotesやSoT Recordsなどとの気鋭のコラボや、Muse DashやLanota、KALPAといった他の音ゲーとのコラボを積極的に実施している。なかでも2021年4月に日本発の個人制作音ゲー・WAVEAT ReLIGHTをフィーチャーした「WAVEAT精選集」にて計4曲が追加された。そのうちの1曲を手がけたkozato snow氏は、雪月こざと名義でも知られる国内のBMS系の作曲家である。「WAVEAT精選集」の楽曲に関してはWAVEAT ReLIGHT側のサウンドトラックにてロングバージョンも含めて収録されている。
前述の通り「WAVEAT精選集」の収録曲のうちの一つがこの曲である。クリーンなピアノとクリアなビートによる親しみやすいイントロで始まり、15秒で鼓が鳴るのを合図にして和風な響きがぐっと強まる。ひらりと舞い踊るように煌びやかな琴の音が響き渡るなかでも相変わらずはっきりとビートを刻むことで、奥ゆかしくも前のめりな印象を与える。35秒でサビを迎えると、美しい琴に美しいピアノが絡み合い、和風ハウスならではの洗練された聴き心地を生む。サビが続く間、作中の譜面はノーツを桜の花びらに見立ててふんわりとフリックが降ってくる点が特徴的で、聴き惚れると同時に見惚れさせてくれる。サビを抜けた後も美しさは衰え知らずで、電子ピアノやシンセストリングスを取り入れて上品なムードを形作る。特にラストのサビに向けて1分35～47秒で徐々にピアノが厚みを増していくくだりは非常に気持ち良い。譜面とあわせて秀逸な一体感と恍惚感を味わえる一曲である。
元々WAVEATの曲ですが、個人的にPhigrosで初めて知ったというのと、あと譜面のインパクトが強いのでPhigros側で記事を書きました。譜面の動画と、あとロングバージョンも貼っておきます。
