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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1422 『Kill U 2wise Over』(白井智廣/NO MORE HEROES 2 DESPERATE STRUGGLE/Wii)

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グラスホッパーマニファクチュアがおくる殺し屋アクションアドベンチャー

ノーモアヒーローズより、白井智廣作曲、2の『Kill U 2wise Over』。

ランク8位戦で流れます。

殺し屋のクレイジーな死闘を描くノーモアヒーローズシリーズのナンバリング2作目にあたる本作。前作から3年、全米殺し屋ランキング1位だったトラヴィスはいつの間にか51位にまで転落して冴えない生活を送っていたところ、復讐を目論む殺し屋の挑戦を受けたことをきっかけに再び頂点目指してランク戦に挑むことになる。前作でおなじみのカオスでフリーダムなノリと、ビームカタナで敵をぶった斬るアクションは健在で、本作では復讐をテーマにしたディープな物語が紡がれる点が特徴である。使用できる場面は限られるが、トラヴィス以外にジャンプが可能なシノブと高速移動が可能なヘンリーがプレイアブルになった。また、トラヴィス自身にも一刀だけでなく二刀を用いた戦闘スタイルが追加された。前作ではオープンワールド風の街を探索する要素があり、ランク戦に挑むには多額の費用をバイト等で稼ぐ必要があったが、本作では探索要素が廃止されて費用稼ぎの必要がなくなり、全体的なテンポ感がコンパクトになった。とはいえ、レトロ風ミニゲームや各種コレクションといったお遊び兼やり込み要素も相変わらず充実している。総じて前作の濃さを受け継ぎつつ快適さと痛快さが増した仕上がりとなっている。後にスイッチやSteamに移植された。

本作の音楽を担当するのはFIBER JELLY(杉山圭一)氏、MACHINE HEAD(山岡昇)氏、後藤和浩氏、駒木根"VARI"将友氏、小森雄介氏、白井智廣氏、高田雅史氏、萩尾雅彦氏、福田淳氏、マル氏、吉岡たく氏、渡辺良氏。このうち小森氏、萩尾氏、福田氏、山岡氏は当時グラスホッパーマニファクチュアに所属していて、高田氏はかつて在籍経験があった作曲家である(ただし高田氏は原曲提供のみで本作用に楽曲は制作していない)。その他はゲストアーティストとして参戦していて、駒木根氏はロックバンド・THE RIOT -怒りの十代-のギタリスト、後藤氏と白井氏はロックバンド・NEUTRINOのメンバー、マル氏はテクノバンド・HONDALADYのボーカル、吉岡氏はフリーの作編曲家、渡辺氏はニューウェーブロックバンド・CONVEX LEVELのギタリストである。前作では高田氏と福田氏の二名体制だったが、本作以降は多数の気鋭のアーティストを交えるようになった。本作は復讐がテーマということもあってヘヴィなギターをフィーチャーした楽曲が多いが、一方で爽やかなポップ系やチップチューン系のものもあり、バラエティ豊かなサウンドを堪能することができる。サウンドトラックは数量限定で発売されていた。

ランク8位戦に該当するニュー・デストロイマンとの戦いで流れるのがこの曲である。やたら姑息な手段を使う筋肉隆々の曲者で、前作でトラヴィスに真っ二つに両断されたはずがサイボーグ化して戻ってきて、しかも今回は左右両半身で二体いる。早い話、2対1であり、片方を倒しても蘇生するし、この戦闘はシノブを操作することになるため、慣れないうちは厄介この上ない。そんななか、イントロからドライブ感あふれる濃厚なギターによって痺れるような昂揚感をもたらしてくれる。10秒過ぎでドラムが入るとますます躍動感が増し、23秒頃から絶妙に心くすぐるメロディーを奏でて盛り上げていく。破壊力のあるリフを終始繰り返すなかでも、1分半過ぎですこしテンションを抑えて調子を整えたり、続く1分43秒以降は再び獰猛さを取り戻したりしてメリハリをつけている。スカッとするほどワイルドでエネルギッシュな一曲である。

前作のデストロイマン戦の曲(高田さん作曲の『Stop Hanging DJs』)のほうがむしろサイボーグ感があるドープな曲調ですが、これはこれで雰囲気が合いますね。『Stop Hanging DJs』もあわせてどうぞ。

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