グラスホッパーマニファクチュアがおくる探し屋アドベンチャー・花と太陽と雨とより、
高田雅史作曲、『KATHARINE #1』。暗号入力機のキャサリンを使用する際に流れます。
上記動画の43:49から48:10まで。
斬新で深遠な作風で知られるシルバー事件の後継作にあたる本作。探し屋を生業とするモンド・スミオは、ホテルの支配人からの依頼でやってきた南の楽園・ロスパス島にて次々と発生する怪事件に巻き込まれることになる。ガイドブックと万能暗号入力機キャサリンを手に南の島に隠された秘密を解き明かしていくアドベンチャーで、物語を読み進めるだけでなく島を歩き回ったり暗号を入力したりする探索および謎解き要素が含まれる。雰囲気づくりの一環としてあえてローポリゴンに徹したビジュアル表現と、例によって物語も登場人物も癖だらけで不可解だけど引き込まれるような世界観が特徴である。よく分からない事件を追って島で聞き込み調査をおこない、得た情報とガイドブックのヒントを照らし合わせてキャサリンに数字から成る暗号を入力し、正答すれば謎が解明するがまたよく分からない何かに惑わされる、というのが大まかな流れである。浮世離れした味わいのある意欲作に仕上がっている。後に追加要素を加えてDSに移植された。
本作の音楽を担当するのはTORN。高田雅史氏と保本真吾氏から成るユニットで、両名とも当時グラスホッパーマニファクチュアに所属していた作曲家である。このうち高田氏はシルバー事件でも作曲経験がある。本作の楽曲の多くはクラシック音楽の有名どころのアレンジであり、原曲のメロディーを残しつつ南国テイストの中毒性のある曲調に再構築されている。本作オリジナルの楽曲に関しても、他の楽曲群から浮かないが埋もれもしない独自の存在感を放っている。サウンドトラックについては2種類に分かれて収録されているが、一部の楽曲は未収録である。
暗号入力機のキャサリンを使用する際に流れるのがこの曲である。キャサリンを使用するということはすなわち、島を歩き回って手がかりを掴み、いよいよ数字を入力する、謎解きの大詰めとも言える段階である。そうしたなか、ピアノやシンセ、ファンクギターなどの刺激的な音色を見事に組み合わせて虜になるようなセンスとスリルを感じさせる。曲の大部分は終始似通ったフレーズの反復で構成されているが、むしろそのおかげで嵌まったら抜け出せない驚異の没入感を生み出している。34秒（上記動画の44:23）あたりでキーが変わるなど、曲が進むにつれて多少の変化は伴うものの、一定の張り詰めたテンションを貫き通している点が印象深い。超常的な鮮やかさに満ちた一曲である。
この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。聴いていると悦に入るというか魂が満たされていく感じがして良いですね。
