沓掛隆志作曲、『地底フィールド』(仮称)。地底編のフィールドで流れます。
ドラえもんのゲーム化作品のうち、後に数多く手がけることになるエポック社製の第1弾にあたる本作。復活した凶悪な未来人・ギガゾンビの罠によってドラえもん一行がバラバラの時空に飛ばされてしまったことを受け、ドラえもんの友だちである主人公は唯一現代に戻れたドラえもんと一緒に時空を超えた大冒険に出ることになる。オリジナル主人公を交えながら劇場版大長編ドラえもんの後日譚のような展開を描いた独自のストーリーが特徴的なRPGである。魔界編、海底編、地底編、古代編の4部構成で、最大4人の固定メンバーパーティで各地を巡ってコマンドバトルをこなしてレベル上げや装備品集めに勤しみながら物語を進めていく、非常にオーソドックスな構成を取っている。おなじみのひみつ道具は本作でも存分に活かされていて、戦闘中にドラ焼きを消費して攻撃や補助に役立てられるほか、探索時にもたとえばタケコプターで空を飛んだりどこでもドアでテレポートしたりすることができる。ドラえもん一行の適材適所な活躍はもちろんのこと、映画版キャラが多くゲスト出演している点も魅力的である。総じて原作を尊重した上質な世界観づくりと王道RPGとしての遊び応えをバランスよく両立した仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは沓掛隆志氏。スタッフロールではターシー・ルーパー名義でクレジットされている。当時エポック社に所属していたと思われる作曲家兼プロデューサーである。本作では勇ましく聴きやすく適度にスリルをはらんだ、RPGサウンドの醍醐味を押さえた楽曲が取り揃えられている。フィールドごとに異なるBGMを用意することで時空を超えた冒険を活き活きと彩ってくれる。オリジナル曲以外にもドラえもんのうたのファミコン音源版が収録されている。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。
地底編のフィールドで流れるのがこの曲である。「のび太と竜の騎士」に登場する地底世界のことで、本作では物語後半に訪れることになる。等間隔に刻むベースの上を物悲しくも決然としたメロディーが鮮やかに駆け抜けていく、さながら一種の労働歌や革命歌のような芯の強さが印象的である。出だしから凄まじくキャッチーだが、13秒からは優雅で流麗な間奏を奏で、低音域ではドラムと溶け合うようにリズムを鳴らし続ける。その響きは美しいがゆえにかえって悲愴感が強まる印象を与える。8小節×2フレーズのみ、1ループ26秒で完結するが、短いなかでも信念と意志の固さが如実に感じ取れる一曲である。
ギガゾンビの逆襲から何か、というリクエストをいただきました。いろいろ考えて選曲は定番どころに落ち着きましたが、海底フィールドのリズミカルな感じも癖になりますね。せっかくなのであわせてどうぞ。