VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1226 『Start the game.』(福田淳/No More Heroes 3/NS)

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グラスホッパーマニファクチュアがおくる殺し屋アクション・ノーモアヒーローズより、

福田淳作曲、3の『Start the game.』。チュートリアル戦闘で流れます。

殺し屋のクレイジーな死闘を描くノーモアヒーローズシリーズのナンバリング3作目にあたる本作。伝説の殺し屋・トラヴィスは、突如地球に侵略してきた極悪宇宙人・FU王子の酔狂により銀河系スーパーヒーローランキング戦が開催されたことを受け、地球人代表として参戦することになる。シリーズ特有の痛快なノリとランキング形式で格上をぶっ飛ばすゲーム性はそのままに、本作ではアクションやフィールド探索の手触りが強化された。戦闘ではビームカタナを用いた剣戟を中心に、各種スキルやプロレス技、ときにはロボへの変身を交えて戦う。キャラの動きにマッチした直感的な操作が特徴で、一戦ごとに派手で気持ち良い演出を味わえる。フィールド探索に関しては複数のマップと多彩な寄り道要素が用意されていて、トイレ修理や草刈り、ワニを戦車で迎撃する沿岸警備といったヘンテコな遊びがてんこ盛りである。また、物語を進めるうえでレトロ2Dアクション、シューティング、POVホラー、ターン制コマンドバトル、椅子取りゲームなどを次々と体験することになり、至るところにネタが仕込まれている。明るいゴア表現のもとでナンセンスなスペクタクルを楽しめる会心の怪作に仕上がっている。後にPS4、PS5、XboxOne、X|S、PCに移植された。

本作の音楽を担当するのは大賀智章氏、金子ノブアキ氏、福田淳氏、古川麦氏、Tony Astro氏、Natsu Fuji氏、MEEBEE(アボカズヒロ)氏、MIYOSHI fumi氏、SEKITOVA氏など。過去作同様に多くのゲストコンポーザーが参加していて、スタッフロール未記載の者もすくなくない。このうち福田氏は元グラスホッパーマニファクチュアの作曲家で、シリーズには初代から携わっている。金子氏はドラマー兼俳優で、ゲーム音楽に携わるのは本作が初めてとなる。MEEBEE氏は前作(Travis Strikes Again)でサウンドの中心的な役割を果たしたDJで、本作でも引き続き複数の楽曲を書き下ろしている。ロック、EDM、チップチューン、各話のエンディングで流れるボーカル曲など、奇抜な作風に見合った多様かつ野心的な楽曲が揃えられている。サウンドトラックについては、DDX版にデジタルサントラが付属されているほか、期間限定で公式のYouTubeチャンネルで公開されていた。

チュートリアル戦闘で流れるのがこの曲である。突然現れた宇宙人のザコを相手に、いつもの革ジャン姿ではなく部屋着のまま戦うシーンで、操作説明やヒロインの解説を頼りにとりあえずぶった切ることになる。エンジン音に似たけたたましい轟音で始まり、ファンキーなギターとピアノを組み合わせて刺激的な旋律を奏でる。ギターが激しく掻き鳴らされるなか、ピアノは打楽器としての本分を全うするかのように、鋭く歯切れの良い音色を一定間隔で鳴らし続ける。ギターの響きは荒々しいが、全体的なリズム感やドラム捌きなどと相まって、不思議と淡々として落ち着いているような印象を与える。22~23秒や44~45秒などで時折ピアノの美しい音階を披露したり、曲終盤の1分半過ぎではピアノを伴わずにギターが馴染みのフレーズを繰り返したりすることで、うまくそれぞれの楽器の持ち味を活かしている。淡泊だが昂揚感あふれる一曲である。

癖になる聴き心地ですね。ちなみに曲名は戦闘開始直前のトラヴィスの台詞から来てます。