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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1225 『Euress』(大山曜・津田治彦・西村大平/ディガンの魔石/PC88)

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アーテックがおくるRPG・ディガンの魔石より、

大山曜津田治彦・西村大平作曲、『Euress』。エウレスの町で流れます。

ミネルバトンサーガなどで知られるアーテックと、SF作品の企画やアートを手がけるスタジオぬえの提携作品にあたる本作。惑星・ガデュリンを舞台に、祝言を挙げたばかりの青年・ディノは、奇病に侵された妻のアビリアを救うべく、治療法を求めて旅立つことになる。限られた発色数のなかで絵画のようなタッチで描かれる精緻なビジュアルと、冒険の裏で営まれる実生活や人間模様にも焦点を当てた独自のファンタジーSFの世界観が特徴である。物語に沿って町々を巡ったり、仲間をパーティに加えたり、ターン制で敵と戦ったりする点はRPGの定石を踏襲している。一方で、時間の概念があり、食事・仕事・睡眠といったサイクルを回す必要がある(仕事しないと金に困るし、適度に食事や睡眠を摂らないとステータスに悪影響が出たり様々な病気に罹ったりするし、病は周囲にうつる)ほか、仲間との人間関係に応じて戦闘での行動が変わったりパーティから離脱したりするなど、シミュレーション的な側面がある。また、情報収集に欠かせないNPCとの会話には選択肢や台詞の種類が豊富に用意されていて、コマンド選択式ADVを彷彿させる味わい深さがある。斬新なゲーム性と生々しい作風が光る仕上がりとなっている。PC98やMSX2にも移植されている。

本作の音楽を担当するのは大山曜氏、津田治彦氏、西村大平氏。エンディングの作曲にフォークシンガーのばんばひろふみ氏を起用しているほか、スタッフロールに記載はないがマニピュレート等で当時デビューしたての崎元仁氏が携わっている。メインの担当者である三名はいずれも当時、津田氏率いる音楽制作スタジオ・サイコソニックに所属していた作曲家である。本作ではファンタジーらしい流麗さと、SFらしい硬派さを併せ持つ楽曲が揃っていて、機種ごとに音源が異なる。後に本作の後継作として世界観を共有するガデュリンが登場した折には、本作のBGMがアレンジされて用いられている。サウンドトラックは本作単体では未発売だが、前述の通りアレンジが収録されたガデュリンのアルバムは存在する。

エウレスの町で流れるのがこの曲である。妖精の国エウラドーナの首都であり、水に浮かぶ風光明媚な町並みから水上都市として名高い。PSG音源を印象的に用いた透き通るような音色が特徴で、抜群の美しさを誇るメロディーと、それに優しく付き添うオルガン風の伴奏によって、うっとりと夢見心地に陥るような素敵な響きを生む。開始からしばらくはゆったりとした調子で旋律の秀逸さを存分に堪能できるが、25秒頃からオルガンがざわめき始め、押さえつけるような重圧的な低音が響くようになる。それでもなお美しさが損なわれることはなく、36秒あたりから徐々に主旋律が活気を帯びると、43秒でキーが変わって伴奏ともども着実に幻想的な色合いを取り戻していく。50秒ほどで1ループが完結し、以降再び、息を呑むほどの甘美さと重厚さを交互に味わわせてくれる。ひたすら秀麗な一曲である。

溜め息が出るくらい好きです。大山さん主宰のプログレユニット・ASTURIASの1stアルバム「Circle in the Forest」の表題曲に、ミネルバトンサーガや本作の他の曲とあわせて、この曲の旋律が組み込まれてます。あわせてどうぞ(当該箇所は主に12:30~ですが、冒頭からお聴きください)。

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