Lassがおくる恋愛アドベンチャー・少女神域∽少女天獄より、
姉川史作曲、彩音歌唱、『punitive justice ~千年の錯綜~』。
トゥルーエンドで流れます。
アダルトゲームブランドのLassによるスピンオフ除く5作目にあたる本作。石壁に覆われた由緒ある町・佳城市を舞台に、久々に実家に戻ってきた大学生の主人公・稜祁恂は祭りを担う氏子の家系として、幼馴染である四人の巫女たちと共同生活を送るなかで、やがて残酷な運命に巻き込まれることになる。和風伝奇モノとしての色合いが強く、主人公の出自の特殊さはもちろん、攻略対象のヒロイン4人とも地元の名家の出身で、家柄や因習などが作中でたびたび取り扱われる。晦渋な用語や設定が随所にみられ、共通ルートが長く、個別ルートに入ったあとの展開もトゥルー以外はよく似ているなど、回りくどく繰り返される描写が多い。陰鬱な内容や救いのなさが目立つ一方で、日常シーンにおける町巡りや食事ネタが充実していて、意図的なのか分からないアンバランスさがある。総じて一見飲み込みにくいニッチなつくりに仕上がっている。
本作の音楽を担当するのは坂本昌一郎氏。フリーランスの作曲家で、Lass製の作品には前作の11eyesで携わって以降、本作でも続投している。主題歌の作曲はそれぞれOP、ED、トゥルーEDで西隆彰氏、森本貴大氏、姉川史氏が担当していて、OPとEDは当時新進気鋭のボーカリスト・marina氏が、トゥルーEDには11eyesでもおなじみで美少女ゲーム方面で多く活躍している彩音氏が歌唱を務めている。本作では世界観に合わせて和楽器やオーケストラ、シンセなどをうまくミックスしたダークでシリアスなサウンドが揃っている。特にクラシカルな弦楽器や和笛を印象的に用いていて、勢いのあるものやメロディーの美しさが映えるものなど曲調は様々だが、いずれもずしんと来る重さがある。サウンドトラックには主題歌のショートバージョンも含めて収録されている。
トゥルーエンドで流れるのがこの曲である。イントロでピアノとシンセがまるでしんしんと降り積もる雪のように奏でられ、22秒から「遥か」という歌い出しとともに静かだが芯のある声が入ると、たちまち強く惹き込まれる。その後しばらくは憂いを帯びたまま停滞し続けるが、1分6秒以降フレーズが進み、1分23秒の「厭わない」から弦楽器の華麗な伴奏を交えて着実に盛り上がっていく。サビ直前の1分29~31秒には歌い出しと同じ「遥か」で声を張り上げて歌詞を循環させ、そこから解放的なサビへと繋げることで因縁を越えてトゥルーエンドに辿り着いた実感を印象付ける。歌詞を変えながらサビを二度歌い上げたあと、2分22秒から名残惜しげに最後のメロディーを繰り返して終わりを迎える。結末は幸せなものではないが、これで一つの決着がついたのだろうと思わせられる一曲である。
曲名のpunitive justiceは懲罰的とか報復的な正義、要するに因果応報のことですね。フルサイズもあわせてどうぞ。