スクエニがおくるRPG・ファイナルファンタジーより、
浜渦正志作曲、13の『閃光』。通常戦闘で流れます。
FFシリーズのナンバリング13作目にあたる本作。ファルシと呼ばれる超常的な機械生命が築いた天上の楽園・コクーンと、その外に広がる下界・グラン=パルス、互いに互いを唾棄する世界を舞台に、予期せぬ下界との接触により妹をルシ(ファルシの手駒のようなもの)に変えられた主人公の女性・ライトニングは、己もまた使命を果たさねばならぬ身となり、運命に抗う術を探すことになる。美麗で存在感のあるグラフィックと、スピーディーでスリリングな戦闘システムが特徴である。物語は全13章構成で、世界観に関わる独自の用語が多く登場し、終盤を除いてほぼ一本道かつ一方通行な形式で過酷な旅路を追体験していく。戦闘システムはシンボルエンカウント制、最大3人まで参加可能だが直接操作できるのはプレイヤーキャラのみで、戦況に応じてオプティマを切り替えることが攻略の肝となる。オプティマとは、誰がどのロール(アタッカー、ヒーラーなどの役割)を担うかを事前に設定する戦闘陣形のようなもので、その組み合わせと切替のタイミングを以って、いかに効率的に味方と連携して敵を切り崩すかという駆け引きを楽しむことができる。総じて物語・戦闘ともに独特な臨場感のある仕上がりとなっている。後にXbox360やPCに移植された。
本作の音楽を担当するのは浜渦正志氏。当時スクエニに所属していた作曲家である。編曲やオーケストレーションには氏自身に加え、同じくスクエニより鈴木光人氏、仲野順也氏、山﨑良氏が、フリーランスからは大森俊之氏、田部井とおる氏、平野義久氏らが携わっている。浜渦氏はFFシリーズには本作以前にも10やDCなどで他のスタッフとの共作で作曲経験があるほか、関連作品に目を向ければチョコボの不思議なダンジョンにて全曲担当したことがある。本作はシリーズサウンドの生みの親である植松伸夫氏を交えず、浜渦氏が単独で作曲を手がけている(歴代おなじみのテーマのアレンジ等は健在である)。優雅で力強い曲調からハウスやバンド風の洒落たものまで、生オーケストラと打ち込みを併用した濃密なサウンドが揃っている。サウンドトラックについては、主題歌含め4枚組で収録した通常盤のほかに、海外版の追加曲や試作曲を収録したPLUS版やピアノアレンジ盤が存在する。
主に序盤の通常戦闘で流れるのがこの曲である。冒頭から迫力のある効果音を配置しつつ、すぐには本格始動せず、短く吼えるように響く弦楽器を用いて英気を蓄える。12秒から勇壮な金管楽器を加え、弦楽器が滑らかな音色を奏でるようになると、気品を感じさせるとともに徐々に疾走感を帯びていく。エレキギターが参戦する23秒頃から顕著に力強さが増し、その勢いに乗じて35秒からバイオリンのサビが入ると、一気に豪快な盛り上がりをみせる。はじめはエフェクトを駆使したオーケストラサウンドという体だが、聴いているうちにバイオリン主体のロックナンバーに変貌している点が印象深い。50秒過ぎには、清々しく響き渡るバイオリンの高音に追随する形で金管楽器が勢力を取り戻し、ロックとオーケストラが見事な融合を果たす。サビが終わると今度はドラムがざわめき出し、1分10秒には切れ味鋭い弦の音色や重圧感のあるエフェクトも交え、ループ前のひと時を華麗に駆け抜ける。ループに入る際は瞬時に、なおかつ違和感もなく、曲調の雰囲気がリセットされ、新鮮な気持ちで再び壮大な展開を披露してくれる。非常に爆発力のある一曲である。
この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。サビまでが長くて音の響きが異なる別アレンジ『M5_2「閃光」Long Version』があるのと、あとこの曲の旋律は主人公のテーマ曲『ライトニングのテーマ』と共通してますね。二つともあわせてどうぞ。