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#1106 『決戦』(浜渦正志/ファイナルファンタジーX/PS2)

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スクウェアがおくるRPGファイナルファンタジーより、

浜渦正志作曲、10の『決戦』。ラスボス戦で流れます。

ファイナルファンタジーシリーズのナンバリング10作目にしてPS2進出作にあたる本作。死と破壊をまき散らす謎の怪物・シンの襲撃により1000年後に飛ばされた主人公のティーダは、シンを倒すため戦う召喚士の少女・ユウナとの出会いを通じて、互いに惹かれ合いながら運命に立ち向かうことになる。PS2のスペックを活かしたボイス付きの美麗なムービーシーンと、表情の機微や心情描写にこだわった壮大で切ないストーリーが特徴で、従来の西洋風の世界観ではなくアジアンテイストな路線を採用している。システム面での変化も顕著で、戦闘は新たにカウントタイムバトルという、これまでのATBからリアルタイム要素を差し引いたものになったほか、レベル制を廃止する代わりにスフィア盤というボードを用いた成長要素が導入された。シリーズの新たな可能性を開拓した意欲作に仕上がっている。後にPS3、Vita、PS4、スイッチ、XboxOne、SteamにHD移植された。

本作の音楽を担当するのは植松伸夫氏、仲野順也氏、浜渦正志氏。いずれも当時スクウェアに所属していた作曲家である。植松氏はFFの本編シリーズにおいて本作以前はすべて単独で作曲していたが、本作から複数人による共同作曲体制に変わった。本作では哀愁を誘う物憂げな曲から激しく煌びやかな曲まで、シーンにマッチした上質な楽曲群が揃っていて、とりわけ作中でいくつかアレンジが存在するオープニング曲『ザナルカンドにて』がよく知られている。また、HD移植に際して多くの楽曲がリマスターされている。サウンドトラックについては、オリジナル音源とリマスター音源のものがそれぞれ発売されているほか、ピアノアレンジ盤やチップチューンアレンジ盤も存在する。

連戦が続くラストバトルのうち、最後の戦闘で流れるのがこの曲である。半ばイベント戦のような最終決戦を、冒頭から鬼気迫るオーケストラで重厚に盛り上げる。13秒でシンバルが入ると、徐々にはっきりとした旋律を奏でるようになる。そのまま押し潰されんばかりの勢いが持続するかと思いきや、24秒から急にピアノが軽やかに荒ぶり出す。プレストよりも速いプレスティシモのような狂った速さで、それでいて正確に規則的にテンポを刻むことで、非常に美しくもストイックな印象を与える。間奏や裏メロでところどころにさりげなく本作の重要なテーマ曲である『祈りの歌』や『素敵だね』のフレーズを織り交ぜていて、そのアレンジの嵌まり具合も相まって強い没入感を生み出す。3分手前になるとオーケストラの伴奏がピアノを包み込むように奏でられ、ピアノから主役の座を引き継ぎそうな覇気をみせるが、3分8秒で再びピアノの勢力が強まり、躍動感のあるマリンバの音色ともども派手に疾駆する。が、3分18秒で金管楽器が鋭く吠えると、ピアノが瞬時に途絶え、たちまち冒頭13秒からと同様のオーケストラフレーズへと回帰する。思わず畏怖の念を抱くほどに濃密な一曲である。

なんというか、濃密すぎて胃もたれしそうになります。『祈りの歌』(作曲は植松さん、編曲は浜渦さん)と『素敵だね』(作曲は植松さん)もあわせてどうぞ。

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