VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#470 『海底神殿』(光田康典/クロノ・トリガー/SFC)

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スクウェアがおくるRPGクロノトリガーより、

光田康典作曲、『海底神殿』。同名のダンジョンで流れます。

FFシリーズの坂口博信氏、ドラクエシリーズ堀井雄二氏と鳥山明氏とが一堂に会してつくりあげたドリームプロジェクトとして登場した本作。シナリオ、グラフィック、ゲームシステム、サウンド、どれをとっても超大作というフレーズに違わぬ最高峰のクオリティを誇るスーファミ屈指の傑作として語り継がれている。世界を破滅へと導く生命体・ラヴォスを打倒すべく、原始、古代、中世、現代、未来の五つの異なる時代を駆け巡る大冒険は、今なお根強い支持を集め続けていて、PSやDS、PC版など、現在に至るまで様々なハードにたびたび移植されている。

本作の音楽を担当するのは植松伸夫氏、松枝賀子氏、光田康典氏の三名。いずれも当時スクウェアに所属していた作曲家で、このうち光田氏は本作がデビュー作である。植松氏と松枝氏の担当曲は数少なく、ほとんどが光田氏の作曲したものとなっている。時空を越えた壮大な冒険譚を彩る本作の楽曲は、それぞれの時代の雰囲気を反映させつつ、いずれもスケールの大きさを感じさせる出来栄えとなっている。サウンドトラックはハードごとに別々のオリジナルサントラが用意されているほか、アレンジアルバムもいくつか発売されているなど、音楽面での人気を裏付ける充実ぶりとなっている。

海底神殿で流れるのがこの曲である。物語終盤に登場するダンジョンで、その名の通り海底に佇む巨大な神殿にして、本作の諸悪の元凶たるラヴォスのエネルギーを吸い取っている古代の建築である。そこで流れるこの曲は、禍々しさあふれる神殿の空気感を体現した、怪しげで邪気に満ちた旋律が印象的である。伴奏として低音のピアノを響かせつつ、主旋律にはストリングスやフルートを思わせるオーケストラ風の音色を据えることで、威圧感や緊張感に満ちた雰囲気を見事に描き出している。それでいて全体を通じてどこか神秘的な響きを帯びていて、その様子は古代において神と崇められたラヴォスの絶望的な神々しさを彷彿させる。暗く重苦しい神殿の雰囲気を丸ごと表現した一曲である。

個人的には本作の楽曲のなかでは『サラのテーマ』に次いで好きな曲です。

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