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#007 『サラのテーマ』(光田康典/クロノ・トリガー/SFC)

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スクウェアがおくるRPGクロノトリガーより、

光田康典作曲、『サラのテーマ』。サラ関連のイベントで流れます。

原始、古代、中世、現代、未来を巡る大冒険を描いた本作。主人公クロノは、偶発的な事故によって時空移動が可能となったことで、行く先々で様々な事件に巻き込まれながら、やがては世界を揺るがす大災厄に立ち向かっていくことになる。王道な冒険譚ながらも、タイムトラベルによる歴史の改変やパラドックスに大きく焦点を当てた壮大なシナリオが特徴で、すべてにおいてドリームプロジェクトの名に恥じぬ高水準な完成度を誇る。後にPSやDS、アプリなどにも移植された。

本作の音楽を担当するのは植松伸夫氏、松枝賀子氏、光田康典氏の三名。いずれも当時スクウェアに所属していた作曲家たちで、前二名の担当分は少数に留まる。かわりに大半を作曲したメインコンポーザーの光田氏は本作がデビュー作である。光田氏に関してよく知られた逸話として、氏は入社当初コンポーザー志望だったにも関わらずなかなか作曲させてもらえず、一念発起して当時の副社長に直談判しに行ったところ、いきなりビッグタイトルを任せられたという。そうした期待に見事に応えて、本作ではRPGの醍醐味を表現したバラエティ豊かな楽曲が揃っている。サウンドトラックはオリジナル音源、PS音源、DS音源など複数種類が発売されている。

古代の魔法王国ジールの王女にして、本作のキーパーソンとも言える魔王の姉であるサラのテーマとして流れるのがこの曲である。ジールには女王による独裁的な体制が敷かれていて、サラもまたその毒牙にかかり、しまいにはその身を犠牲にして行方不明になってしまうが、そうした儚き運命を背負った少女を、この曲は幻想的で退廃的なメロディーで見事なまでに描写している。途切れることなく終始流れ続ける伴奏、そこに載せられる心洗われるほど神秘的な旋律、ところどころで音階を一気に駆け上る優美なハープは、『時の回廊』におけるシタールの、音の螺旋階段を駆け下りていくフレーズとまるで対の関係を成しているかのような響きを持つ。儚さと切なさと優しさが入り混じった一曲である。

『時の回廊』と比較して聴いてみてください。駆け上るハープは上記動画の1:27あたり、駆け下りるシタールは下記動画の0:09や0:52あたりのこと。

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