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#1363 『CAVERN』(植松伸夫/ブルードラゴン/X360)

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ミストウォーカーアートゥーンがおくるRPGBLUE DRAGONより、

植松伸夫作曲、『CAVERN』。人食いの森などで流れます。

Xbox360専用の大作RPGとして登場した本作。魔法と機械を操る超文明が滅びて久しい世界を舞台に、年に一度、地鮫が襲い来る災いに悩まされる村に住む少年・シュウは、友達のジーロとクルックと一緒に地鮫を止める策を講じたところ、災いの裏で糸を引く者の存在を知り、成り行きで影の魔法を得て戦うことになる。プロデューサー兼シナリオライター坂口博信氏、キャラデザインに鳥山明氏、音楽に植松伸夫氏という豪華制作陣がおくるシリアス路線の王道JRPGである。魔法がもたらすファンタジーらしさと機械がもたらすSFらしさが融合し、愛嬌とメカメカしさを兼ね備えた表現力豊かな世界観とグラフィックを堪能できる。本作の肝となるシステムとして影の概念があり、一般的な武器や防具等は存在しない代わりに9種類の影を装着したり強化したりして固有の能力補正やスキル習得などの恩恵を得られる。戦闘システムはコマンド式で行動や素早さによって行動順が可変するタイプで、攻撃時にためると発動が遅れる分、威力が上がったり範囲が広まったりする戦略的な駆け引きを楽しめる。エンカウント時の敵の組み合わせ次第で敵同士が戦う、範囲内のエンカウント対象を取捨選択して任意の敵と戦える、などの一風変わった快適要素も搭載されている。全体的に古典的で丁寧な仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは植松伸夫氏。FFシリーズの作曲担当として名高いフリーランスの作曲家で、坂口氏率いるミストウォーカー製の作品には本作を皮切りに頻繁に携わっている。本作では正統派なファンタジーらしいオーケストラやアコースティック系のサウンドに加えて、古代文明やロボットが登場する作品らしい怪しげな電子音を多用したもの、ボーカル入りのパンキッシュな戦闘曲など、王道さとケレン味を使い分けたメリハリのある楽曲群が揃っている。サウンドトラックは2枚組で収録されている。

人食いの森やパチェスの町・地下で流れるのがこの曲である。『洞窟』のアレンジで、笛を軸とした上品な室内オーケストラ風の原曲とは異なり、ギターを用いて歪みと不気味さを充満させている。柔らかく感傷的に奏でられるアコースティックギターの伴奏と、同じく感傷的だが騒がしくて落ち着きのないエレキギターの音色が絡み合うことで、何か心につっかえるような独特なやるせなさを漂わせる。13~16秒、52~56秒など、ハーモニクスと思しき急な倍音を響かせることで激しさと切なさを引き立たせているほか、1分36秒からの展開は一際印象深い。細かく掻き鳴らしながら音程を行き来し、2分12秒でエレキギターの重低音が合流してからもしばらくそのままの流れを維持するが、2分26秒でぱたりと途絶えて元通りに戻る。やたら耳に留まる一曲である。

『洞窟』はクラシック然とした、バレエとかに似合いそうな雰囲気ですが、それを秀逸に崩して再構築したような興味深いアレンジですね。『洞窟』もあわせてどうぞ。

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