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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1249 『亜空間のダンジョン』(蓑部雄崇/AWAY シャッフルダンジョン/NDS)

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ミストウォーカーがおくるアクションRPG・AWAYより、

蓑部雄崇作曲、『亜空間のダンジョン』。亜空間のダンジョンで流れます。

FFの生みの親である坂口博信氏率いるミストウォーカーと、ソニックのキャラデザインで知られる大島直人氏を交えて制作された本作。アウェイと呼ばれる神隠し現象が発生するウェッブ村に住む少年・ソードは、あわやアウェイに遭いそうだったところを村娘のアネーラに救われるも、代わりに他の村人全員が消えてしまったことを受け、村人を探しに謎のダンジョンに挑むことになる。主な流れは、シャッフルダンジョンに挑んで最深部を目指し、村人を見つけて連れ帰り、それによって村が活気を取り戻し、次の冒険に向けて施設や品揃えが充実していく、というものである。シャッフルダンジョンとは本作独自のギミックを持つダンジョンのことで、その構造はDSの上下2画面で繋がって表示されるが、一定時間ごとに上下いずれかの構造が変化(シャッフル)する。シャッフルに巻き込まれるとダメージを喰らって攻略中の階の開始地点に戻されるため、うまく別の画面に避難しつつ、シャッフルを有効活用して道を切り拓く必要がある。根幹のシステムこそ斬新だが、簡素なポリゴンで描かれるグラフィックとも相まって全体のつくりは古典的で淡泊な仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは植松伸夫氏と蓑部雄崇氏。植松氏はフリーランスの作曲家で、同じく元スクウェアで代表作がFFシリーズである坂口氏との繋がりから、ミストウォーカー製の作品にはよく参加している。蓑部氏は音響制作会社デルファイサウンドに所属する作曲家で、かつてセガに在籍していたことからソニックシリーズの担当経験があることで知られる。本作では植松氏がメインテーマの作曲を、その他の作曲とサウンドデザインを蓑部氏が手がけている。本作の音楽は、木琴や笛、ギターなどを用いた明るく冒険心をそそるようなアコースティックなファンタジーサウンドが揃っている一方で、特に後半にかけて機械の出現といったSF的な要素が入るため、サイバーでミステリアスな色合いも含まれる。サウンドトラックは未発売だが、作中にサウンドテスト機能がある。

亜空間のダンジョンで流れるのがこの曲である。いよいよ物語の核心に迫ることになる段階で訪れる終盤のダンジョンである。細やかに鳴らされるシロフォンらしき音色に、電気オルガンと思しき伴奏を交えて、いかにも意味ありげで謎めいた響きを生み出す。3~4秒、16~17秒、30~31秒など要所要所で電子音のグリッサンドを挿入することで、純朴な聴き心地のなかに煌びやかなアクセントを加えている。46秒で一旦冒頭に戻ったかのように錯覚させるも、すぐさまシェイカーが鳴ってハーモニカが後を追うようになる。追加された楽器群は、あまり大きく主張するわけではないものの、主旋律に馴染む形でさりげなく溶け込む。似通った曲調が続くなかで、1分半過ぎで急に静止すると、再始動してループに突入するまでの束の間だけ、ぽろぽろと零れ散るようにオルゴールが奏でられる。響きそのものは質素だが、何かざわつくような感触をもたらす一曲である。

妙な言い方ですが、この曲を聴いていると、自分が謎に近付いているというより、謎が自分ににじり寄ってきているような印象を受けます。