スクウェアがおくるRPG・ファイナルファンタジーより、
植松伸夫作曲、『クリスタルタワー』。同名のダンジョンで流れます。
クリスタルを巡る冒険を描くFFシリーズのうち、第3作目にしてファミコン最後の作品として登場した本作。四人の光の戦士たちを主人公に、ときに悲劇的な死を目の当たりにしながらも、それを乗り越えていく壮大な物語となっている。本作からジョブチェンジシステムが導入され、それぞれのジョブの特徴を活かし、戦略性に富んだバトルが楽しめるようになった。また、ファミコンの末期に発売されたこともあり、グラフィック、サウンドともに高水準に仕上がっていて、全体的にみて以降のFFシリーズの基礎となる方向性を確立した意欲作である。後にDSのリメイク版が発売された。
本作の音楽を担当するのは植松伸夫氏。当時スクウェアに所属していた、おなじみFFサウンドの生みの親である。DS版のアレンジは関戸剛氏と河盛慶次氏が手がけている。本作では前作と比べ曲数が大幅に増え、音源的な制約が強いファミコンサウンドでありながら、幻想的で透明感あふれる雰囲気を表現することに成功している。それと同時に、戦闘曲などを中心に植松氏の持ち味であるプログレッシブ系のサウンドも揃っていて、数あるFFシリーズのなかでもとりわけ音楽の評価が高いことで知られている。サウンドトラックはオリジナルのファミコン音源とDS音源のものがそれぞれ発売されている。
ラストダンジョンの前半であるクリスタルタワーは、別名シルクスの塔と呼ばれる光の塔である。全7階、セーブポイントなし、テレポ(脱出)不可、そのうえこの後にも闇の世界が続くことから、その異様な長さが語り草となっているが、そうしたなかで流れるこの曲は、長時間の鑑賞に耐え得るほどの圧倒的な聴き応えを誇る。音階を自由自在に上り下りする伴奏に、清涼感たっぷりの旋律が重なることで、非常に美しく、勇ましく、それでいてどこか切なさをも感じさせる。曲尺自体は1分にも満たない短さだが、それを補って余りある魅力を備えた迫力満点な一曲である。
名曲揃いのFF3のなかでも特に好きな曲です。DS版ではコーラスが追加されて荘厳な雰囲気が増したほか、個人的には時忘れの迷宮のアレンジ(編曲は高橋雄蔵さん)が印象深いです。ラストダンジョンどころか最初のチュートリアルダンジョンでいきなり使用されていて、冒険の始まりを彩るにふさわしい雄大なオーケストラアレンジとなっています。二つともあわせてどうぞ。