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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1865 『甘南備山』(坂本節朗・橋本泰弘・三垣敦史/ONI零~復活~/PS)

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パンドラボックスがおくるRPG・ONIより、

坂本節朗・橋本泰弘・三垣敦史作曲、零~復活~の『甘南備山』。甘南備山で流れます。

和風RPGのONIシリーズのうち、パンドラボックスの自社パブリッシングで登場した本作。人を襲う悪しき妖魔、人との共存を願う心優しき妖魔・隠忍(おに)、妖魔を排さんとする五行軍が対立するなか、五行軍の襲撃を生き延びた隠れ里出身の少年・司狼丸は退魔師となって数奇な運命に巻き込まれることになる。和に凝った世界観やキャラの姿かたちが変わる転身システムはそのままに、本作では従来の明るい冒険活劇調で特撮っぽさのあった雰囲気に代わって、暗澹とした描写を含む作風に調整されている。本作の特徴としてRPGでありながらレベルアップによるステータス上昇がない点が挙げられ、代わりに神交渉というシステムが搭載されている。民家やダンジョン、アイテムなど様々な場所に宿る神々に対し、レベルアップ時に獲得できる徳を消費して交渉することで、その神に応じたステータスを強化できる。育成の自由度や神を探すやり込み要素が充実しているほか、サブクエストの行動次第で報酬や依頼の結末が変わる分岐要素も多数含まれる。シナリオ自体は周回なしの設計で、続編ありきな終わり方を迎える(続編は発売されていない)ため、ボリュームはあるが消化不良なきらいがある。また、戦闘シーンも含めてロード時間が長めでテンポに難がある。総じて細かな粗はあるものの、低価格帯ながらRPG大作としての重厚さがある意欲作に仕上がっている。

本作の音楽を担当するのは坂本節朗氏、橋本泰弘氏、三垣敦史氏。やや情報がすくないが、おそらくいずれも当時パンドラボックスに所属していた作曲家である。このうち橋本氏と三垣氏は本作を含む同社の低価格帯ラインナップ・パンドラMAXシリーズには1作目から連綿と携わっていて、坂本氏は第5弾のごちゃちるから参加している。これまでのONIシリーズに関わっていた渡部陽子氏らは不参加で、ハードの移行とも相まってサウンドには多少の変化がみられる。和風のテイストやすこし剽軽さのある曲調は健在だが、戦闘曲を1曲に絞ってフィールドやダンジョン曲を多めに設けているほか、OPにはあえて英語歌詞のデスメタルのような変化球を取り入れている。サウンドトラックは未発売だが、作中にサウンドテストがある。

甘南備山で流れるのがこの曲である。甘南備山は京都に実在する山で、古くは女人禁制の神聖な山として知られていた。作中では中盤に立ち寄るマップで、代わり映えのない土色の山道や木々が続くが、それがかえって現実味のある旅情を漂わせている。この曲はシャラシャラ鳴るアコースティックギターに奥深い響きを湛えた尺八を添えることで、非常にフィールド曲らしい冒険感と寂寥感を生み出す。ギターはさながら葉擦れのように、尺八はさながら吹きすさぶ風のように奏でられ、36秒で打楽器とストリングスオーケストラが盛り上がると自然の厳しさを強く感じさせる。冒頭から長いこと一定のリズムを刻み続けたギターは51秒からのフレーズでようやく変化をみせ、即興風の麗らかな演奏で独自の哀愁と小気味良さを印象付ける。雄々しさのある一曲である。

山登りするときに聴いたら力が湧いてきそうですね。