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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1160 『ナインウッズヒル・ワールド』(浜渦正志/ワールド オブ ファイナルファンタジー/PS4・PSV)

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スクエニがおくるRPGワールドオブファイナルファンタジーより、

浜渦正志作曲、『ナインウッズヒル・ワールド』。ナイン・ウッズヒルで流れます。

FFシリーズのうち、モンスターの育成に焦点を当てたスピンオフ兼クロスオーバー作品にあたる本作。小さき者たちが住む幻想世界・グリモワルを舞台に、記憶喪失の双子の姉弟・レェンとラァンは失われた記憶を求めて冒険することになる。シリーズおなじみのモンスター(本作ではミラージュと呼ばれる)を仲間にしつつ、ときに歴代キャラと交流しながら進めていくデフォルメ調のRPGである。主人公二人は通常の頭身のオオビト状態と2頭身のプリメロ状態を切り替えることが可能で、見た目のみならず戦闘面でも影響を与える要素として機能している。具体的には、オオビト状態だと小型ミラージュを頭上に乗せてステータスやアビリティを合算できる一方で、プリメロ状態だと大型ミラージュに乗って戦うことができる。戦闘システム自体はシンプルなアクティブタイムバトルだが、サイズの切り替えとミラージュの組み合わせ次第で様々な戦い方を楽しめる。全体的におどけた作風が特徴で、ゲームバランス含めゆるりとした印象を与える仕上がりとなっている。後にPCに移植されたほか、拡張版のマキシマがスイッチとXboxOne向けに登場した。

本作の音楽を担当するのは片岡真悟氏、竹田隼大氏、浜渦正志氏、本多高士氏。ボーカル曲の作編曲に白澤亮氏、藤岡竜輔氏、山﨑良氏も携わっている。片岡氏は当時、竹田氏と本多氏は現在も本作の開発元であるトーセに所属する作曲家である。メインコンポーザーの浜渦氏は元スクエニのフリーの作曲家で、FFシリーズには本編(10や13)に加えDCFF7チョコボといった周辺作品の作曲経験がある。また、白澤氏と藤岡氏は音楽制作会社ノイジークロークに、山﨑氏はスクエニに所属する作曲家である。本作ではオリジナル曲の大半を浜渦氏が作曲している一方で、歴代作品からの楽曲はトーセの3名が中心となって編曲している。勇ましく尖った曲調と耳馴染みする幻想的な曲調がうまくブレンドしたサウンドが揃っている。サウンドトラックはボーカル曲込みで4枚組で収録されている。

ナイン・ウッズヒルで流れるのがこの曲である。主人公二人の出身地であり、異世界・グリモワルと行き来できる場所、いわば本作における冒険の拠点である。現代的な都市風景に合わせて、ニューエイジやエレクトロを思わせる落ち着いた曲調に、あえて日本語ボーカルを載せることで、独創的でありながら不思議と親近感のある印象を与える。曲全体としては電子的な色味が強いが、ストリングスが優雅に流れるように奏でられたり、ピアノが煌びやかに散りばめられたりすることから、決して無機質ではない独特な温かみを感じさせる。「願ったり叶ったり」と取り留めもなく歌い上げるさまは、紛れもなく日本語であるが、どことなく架空言語を連想させる浮世離れした響きを帯びている。歌唱部分の心地良さはもちろん、50秒前後からの間奏部分や、1分15秒頃からループに至るまでのアウトロ部分などにおいても、非常に安らかで美しい魅力に満ちている。日常と非日常、安心と神秘が入り混じったような一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。リピート再生して聴き耽りたくなりますね。曰く「声を入れているのは7人の女性〈全員が素人〉で、4小節ごとに入れ替わり立ち代わり歌って」いるそうです。

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