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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1362 『STAGE 01 破滅』(PEPO SOFT/真・女神転生 SYNCHRONICITY PROLOGUE/PC)

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ladybugがおくるアクション、真・女神転生 SYNCHRONICITY PROLOGUEより、

PEPO SOFT編曲、『STAGE 01 破滅』(仮称)。

STRANGE JOURNEYの『激しい怒り』(作:目黒将司)のアレンジで、1面で流れます。

人と神と悪魔の思惑が絡み合う真・女神転生シリーズのうち、派生企画として国内のゲーム開発チーム・ladybugが制作した本作。南極の亜空間・シュバルツバースを舞台に、謎のプログラムを起動したらジャックフロストの姿になってしまった主人公は、気が向くままに冒険することになる。元は真・女神転生 DEEP STRANGE JOURNEYのPV用のネタとして公開された内容を、期間限定でダウンロード可能なフリーゲームに発展させたものである。DSJの世界観を借りたメトロイドヴァニア型の2D探索アクションで、氷を操るジャックフロストと炎を操るジャックランタンを切り替えながら全5面を攻略していく。レトロで色彩鮮やかなグラフィックのもと、敵味方のラインナップやそれぞれの仕草、攻撃方法に至るまで、原作に忠実なつくり込みの深さを誇る。属性の概念、シリーズおなじみの魔法やアイテム類などは健在で、DSJと直接の繋がりはないとはいえ物語設定や演出からはシリーズの精神が感じられる。そのうえでしっかり探索要素やギミックのバラエティが充実している。総じてよく練り込まれた仕上がりとなっている(現在はDL期間終了済み)。

本作の音楽を担当するのはPEPO SOFT氏。ladybugの一員であるサウンドクリエイターで、peposoftやpepo名義でも知られる。個人でもフリーゲームの制作経験があるようで、本作においては作曲のみならずゲームデザインやシステム関連も手がけている。本作の音楽はシリーズサウンドの重厚さを受け継ぎつつ、アクションのゲーム性にマッチするように電子音楽系のアッパーな色合いを強調している。一部の楽曲は過去作からのアレンジである。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

STAGE 01「破滅」で流れるのがこの曲である。雷鳴が絶えず響くなか、高低差や途切れ途切れの足場などがある入り組んだ構造の施設と、その下に広がる氷窟や水中を進むことになる。初めこそ原曲の『激しい怒り』をそっくりなぞったような派手なオーケストラのイントロで始まるが、11秒からは一転してディスコチックな電子音とビートが響くようになる。原曲は行進曲然とした分厚い曲調でじわじわと怖気を誘うが、このアレンジはぐいぐいと牽引するような勢いがあり、また一味違う怖ろしさがある。特に1分8~17秒で徐々にテンションを高めていって1分18秒からエレキギターをジャラジャラ鳴らす流れは非常に冴えている。1分45秒から再びオーケストラの主旋律が加わる際にもギターはざわめいていて、アップテンポで格好良いけど油断ならない、まかり間違えば破滅まっしぐらな雰囲気がよく伝わってくる。1ループは原曲以上の長さで、たとえば2分52秒からのフレーズは旋律自体は聴き覚えがあっても、他の箇所と比べて電子音やビートの主張が控えめで、曲全体のなかで最も原曲に近い響きと悲愴感を帯びている。原曲の面影を残しつつ、1面に誂え向きな勢いと緊張感をたっぷり漂わせた一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。ラスボス戦も『激しい怒り』のアレンジで、原曲の重苦しさ、1面アレンジでみられた勢い、そして最終戦闘ならではの捻りを兼ね備えた意欲的な出来栄えです。原曲とラスボス戦もあわせてどうぞ。

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