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#1485 『Crowded Town』(佐宗綾子/ストリートファイターEX2 PLUS/PS)

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カプコンとアリカがおくる対戦格闘ゲームストリートファイターEXより、

佐宗綾子作曲、2 PLUS(PS版)の『Crowded Town』。香港ステージで流れます。

カプコンを代表する対戦格闘ゲームストリートファイターシリーズのうち、2Dのゲーム性に3Dポリゴンを取り入れたハイブリッドな作風を特徴とするEX系列のナンバリング2作目のPS移植にあたる本作。アーケード版原作をベースに、家庭用前作(EX plus α)でみられたオリジナルのゲームモードや本作向けの新たな隠しキャラを追加してパワーアップしている。プレイアブルキャラは20人、ゲームモードは原作の流れを再現したARCADE、対人戦用のVERSUSとTEAM BATTLE、基礎練習用のTRAINING、課題に応じてコンボ等の特訓ができるTRIALとMANIAC、さらには映画監督気分を味わえるDIRECTORが収録されている。なかでもDIRECTORモードはリプレイを録画してカメラアングルを自分好みに編集できる代物で、闘いに勝つだけでなく魅せる楽しみを味わうことができる。アーケード版原作同様、自分でコンボを組み立てるエクセルや、3ゲージ消費する超強力なメテオコンボ、必殺技やスーパーコンボをキャンセルするキャンセルブレイクなど、対戦の駆け引きを彩る諸々の要素が揃っている。総じて家庭用移植らしく一人でもたっぷり遊べる充実した仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは相原隆行氏、佐宗綾子氏、細江慎治氏。いずれも当時アリカに所属していた作曲家で、ストリートファイターEXシリーズには連綿と携わっている。また、PS移植に際して編曲のみで渡辺恭久氏も参加している。本作では移植に際して楽曲がリニューアルされていて、曲名は原作と同じでも音源が変わったりアレンジが施されたりしている。テクノ系のクールでエキサイティングな楽曲が多く、移植を経てより厚みが増して表現力が強化されている。サウンドトラックについてはオリジナル盤のほか、シリーズの後継作と言えるFIGHTING EX LAYERの発売に伴って本作含む歴代シリーズの楽曲をまとめたものが存在する。

香港ステージで流れるのがこの曲である。アーケード版に同名の楽曲が原曲として存在し、この曲は本作用のアレンジである。いずれも軸となるメロディーは共通していて、音色の散りばめ方から中華風の雰囲気が漂う点は変わらないが、スピーディーな原曲と比べるとこちらはテンポを落としてより濃密に中華っぽさを醸し出している。三弦と思しき陽気で奥深い音色に、しっかりと周期的に刻まれるビートや、16秒頃からはチャルメラのような剽軽な音色が組み合わさることで、一口に中華と言っても壮大で優美な印象は薄く、むしろコテコテな下町風情が感じられる。原曲よりもテンポが遅いからこそ、30秒以降で派手に反復する際のインパクトが強まっている。54秒からは原曲ではみられなかった新パートが加わっていて、ひたすら楽しく賑やかな旋律を紡いでいく。その後しばらくすると聴き覚えのあるフレーズに戻るが、1分52秒以降には木琴をフィーチャーしたパートが用意されていて、曲後半になっても愉快で新鮮なノリを保ち続ける。対戦の緊張感が伝わってきた原曲とは対照的に、良い意味で騒がしくて楽しげな一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。原曲は本来の意味のテンション(緊張感)があって、こっちは昂揚感という意味でのテンションが高いのが印象的ですね。原曲の他に、佐宗さんのセルフアレンジでテクニクビートにも収録されていて、音ゲーらしいスピード感とテンションがあります。原曲とテクニクビートのアレンジ、あわせてどうぞ。

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