本山淳弘作曲・溝口哲也編曲、PS4移植版の『ORGANIC METAL -ARSENAL-』。
5面の後半で流れます。
ライジングのデビュー作であるアーケード版の魔法大作戦のPS4移植版にあたる本作。量産型の魔導兵器を扱うゴブリガン大王率いる帝国の台頭により王国が窮地に追いやられ、一縷の望みをかけて王国が大王の首に多額の賞金を懸けたところ、四人の勇者たちが大王討伐に乗り出すことになる。全6面・周回ありの縦スクロールシューティングで、ファンタジーとスチームパンクが融合したハイブリッドな世界観や、派手な超魔法ボンバーを軸とした立ち回りが特徴である。移植に際しては、原作を再現したARCADEモード、初心者向けにバランス調整されてボムのストックがあればミスしてもオートボムで持ち直せるSUPER EASYモード、2人同時プレイでハチャメチャな攻防とスコア稼ぎを楽しめるDUALモードが収録されている。ショットのパワーアップ状況やランクの可視化、敵の体力表示など、画面の両脇に役立つ情報が多く盛り込まれ、より現代的で快適な遊び心地を得られるようになった。各種キーコンフィグやスクリーン設定、オンラインスコアランキング、ギャラリー要素なども充実している。総じて原作に要素を追加して遊びやすくチューンした仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは溝口哲也氏。原曲(アーケード音源)の作曲は本山淳弘氏が担当している。溝口氏はフリーランスの作曲家で、シューティングに携わるのは本作が初めてである。本作を皮切りに、本作の移植を手がけたM2製のシューティング移植作品におけるアレンジや追加曲を複数手がけることになる。本作ではサウンドをアーケード内蔵音源、PC音源(FM TOWNSのMIDI演奏再集録)、溝口氏によるオーケストラアレンジバージョンから選べる仕組みである。特にオーケストラ版は原曲よりも曲数が増加していて、ステージによっては前半と後半でアレンジが変わる。原曲はポップとプログレの中間くらいの作風を特徴とするが、オーケストラ版は豪華なシンフォニックロック系の路線を取っていて、聴き心地はだいぶ変わるが根底にある世界観や音楽観は原曲らしさを尊重している。サウンドトラックについては原曲音源のものは存在するが、オーケストラ版のものは存在しない。ただし作中に演奏中のBGM情報が表示されるため、曲名は判明している。
サウンドをオーケストラアレンジバージョンに設定した場合、5面の後半で流れるのがこの曲である。ゴブリガン都市上空から始まって兵器工場内部へと侵入するステージで、都市上空では『ORGANIC METAL -SKY-』が流れ、中ボス戦を挟んで兵器工場に進むとこの曲に切り替わる。原曲『ORGANIC METAL』はオーケストラヒットを多く用いた重厚な曲調で、『-SKY-』はアコースティックギターを取り入れた優美で壮大なアレンジである。対してこの曲は冒頭に煌びやかなグロッケンを持ってくることで、同じ旋律をなぞるのでも印象をがらりと変えている。シンバルでテンションを高めて11秒からうねるようなシンセベースが加わると、理知的であると同時に昂揚感をそそる雰囲気を形作る。まさに要地に潜入した状況にぴったりで、曲が進むにつれて26秒頃からエレキギターが目立ち出したり、43秒からブラスが勢いづいたりしてどんどん盛り上がっていく。特筆すべきは1分あたりでオケヒとギターが交互に鳴ってから華麗なオーケストラ演奏に繋げていくパートである。ここまで来ると曲冒頭の秘密めいた印象はすっかり上書きされて高密度なシンフォニックロックに変貌している。さらに2分7~11秒でギターが泣いた後は、満を持してアコギに出番が与えられ、以降も出し惜しみなしの演奏を披露し続ける。魂揺さぶる緻密で苛烈な一曲である。
すごく硝煙のにおいがする良いアレンジですね。原曲と『-SKY-』もあわせてどうぞ。