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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1445 『きっと逢える』(川元義徳・中川浩二/幽☆遊☆白書/SFC)

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冨樫義博著の同名の少年漫画を原作とする、

ナムコがおくるビジュアルバトル・幽☆遊☆白書より、

川元義徳・中川浩二作曲、『きっと逢える』。スタッフロールで流れます。

オカルトと異能バトルを持ち味とする少年漫画「幽☆遊☆白書」のゲーム化作品のうち、スーファミ向けの第1弾にあたる本作。車に轢かれて死んだはずが訳あって霊界探偵として生き返った不良少年・浦飯幽助は、霊界にまつわる事件を追ううちに様々な強敵とまみえることになる。原作の霊界探偵編から暗黒武術会編を中心に扱っていて、前者は大幅にオリジナル展開を交えながらも概ね全体の流れを踏襲している。ビジュアルバトルというジャンル名に違わず、美麗で躍動感のあるビジュアルで魅せるバトルシーンが特徴である。大まかな骨組みは格闘ゲームに近く、それぞれ性能や使える技が異なる全19キャラが対戦し、先に相手の体力を削り切ったほうが勝者となる。ただしキャラを直接動かすアクション要素はなく、ターン制でコマンド入力して互いの攻防を見守るシミュレーション的なシステムを採用している。各行動には相性や発動の優先順位、コストなどが細かく設定されていて、さらに戦況を左右するものとして、体力やコストを回復できるアイテム類や、攻防の結果に応じて獲得できる霊気玉などが存在する。ボイス付きの凝った演出で白熱したバトルを繰り広げる原作再現要素と、ユニークで奥深いゲーム性とが組み合わさった意欲作に仕上がっている。

本作の音楽を担当するのは川元義徳氏と中川浩二氏。それぞれスタッフロールでは「ドナルドかわげん」と「浩二麿」名義でクレジットされている。いずれもナムコ(現バンダイナムコ)に所属している作曲家である。このうち川元氏は本作では音楽監督を務めている。本作ではボイスの迫力に見合うようにサウンド全体がよくつくり込まれていて、スーファミ音源ならではの弾力のある愉快で力強い楽曲が揃っている。オーケストラヒットを多用したシリアスでドラマチックなものから、作中はカラオケ音源だが歌詞が存在するキャラ固有テーマまで、雰囲気を盛り上げる様々なBGMを楽しむことができる。サウンドトラックにはインゲーム音源の他にボイス集やアレンジ音源、各種ボーナストラックなども収録されている。

スタッフロールで流れるのがこの曲である。画面上半分はキャラが活き活きと描かれたアニメーション、下半分は黒背景にキャストやスタッフの名前が代わる代わる表示される。柔らかさと小気味良さを兼ね備えたキャッチーでリリカルな曲調が特徴的で、そのままそっくりアニメのエンディングテーマとして流れても違和感がないほどの親しみやすさがある。実際、出だしのコーラスからドラムの刻み方、全体を貫くリズム感に至るまで、アニメの2代目ED『さよならbyebye』をオマージュしたつくりとなっている。安定したベースに、18~19秒や30~31秒、45~47秒など後追いで軽快なフレーズが寄り添うことで、すっと耳に馴染んで聴き浸れるポジティブなムードを形作っている。サビの53秒からは思わず「さよならbyebye」と歌詞が聴こえてきそうな印象を醸しつつ、とはいえ完全に一致するわけではないオリジナルのメロディーを紡ぐ。間奏を挟んで二番目に突入するとキーが上昇してまたすこし響きが異なり、さらにサビの後の2分48秒からは音色が伸び伸びと響くパートが待ち受ける。非常に気持ち良い後味と余韻が残る一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。なんだか聴いていると懐かしさがこみあげてくるような感覚がありますね。せっかくなので『さよならbyebye』もあわせてどうぞ。

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